まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座

夕べはいつもより早く寝て十分に睡眠を取り、スッキリ起きて歌舞伎座へ。錦秋十月大歌舞伎。木挽町広場もハロウィンに迎合していた。

天竺徳兵衛韓噺」は休憩をはさんで二幕の構成で、最初の幕には主役の徳兵衛が登場しない。歌舞伎ではおなじみの「お家の重宝」紛失をめぐるお家騒動もので、紛失の咎を負う佐々木桂之助を巳之助の休演で種之助が代役。今日からの代役で、めったに上演されない演目だからあらかじめ台詞が入っているはずはなく、プロンプが付いていた。とはいえ台詞がつまったときに最初のフレーズを助けてもらうだけで、長台詞が多い場面を滞りなく乗り切ったのは立派。桂之助と恋仲のお姫様を新吾。二人の仲を取り持つふりをして、実は姫に横恋慕する敵型に与している重臣を左升さん! 35年の長きにわたり左團次さんのそばにいらしたお弟子さん。もうすっかりベテランなのにこれまでこうした役がなかなか回ってこなかったから、嬉しくって胸熱。敵役の松江は、敵役としての手強さを出そうとしすぎてかえって薄っぺらくなってしまったかな。対象的に冷静沈着な捌き役の亀蔵が際立っていた。

後半でいよいよ松緑の徳兵衛が登場。ひときわ声が大きくエネルギッシュで、舞台の印象がガラリと変わった。史実の通り異国をめぐり帰国したばかりという設定で、吉岡宗観宅にお預けになっている桂之助の気晴らしに異国の話を聞かせるために呼ばれたのだが、実は宗観は日本転覆を図る朝鮮の臣で、徳兵衛はその息子という南北らしい怒涛の展開。妖術で大きな蝦蟇が登場し、豪快な飛び六法で花道を入って幕になる。えっと … お家騒動は結局どうなったのかな? 本来はまだ続きがあるのかも。

続いて山田洋次さん演出の「文七元結物語」。獅童の長兵衛に、その女房お兼を寺島しのぶさん。通常と違い、娘のお久が吉原の角海老に自ら赴くところから始まるので、その後、お兼が帰ってこないお久を必死で探す場面で、観客にはお久の居場所が分かっている。また、お久が角海老の女将にした話をそのまま女将が長兵衛に繰り返しすることになるので、冒頭に加えた場面はやっぱり余計だったんじゃないかしらん。お久の場面を強調したのに対し、長兵衛とお兼の夫婦喧嘩はごくあっさりとしていて、大団円のあとにはお兼が長兵衛に抱きついたりもする。文七の主人である近江屋が「お久を(文七の)嫁に」と申し出ると、長兵衛が近江屋自身の嫁に欲しがっていると勘違いする場面が加わったかと思えば、暖簾分けをしてもらえることになった文七が元結の専門店を出したいと言う「文七元結」の謂れはバッサリとカットされていた。なんかこう、もったいないなぁ、と思うことが多かった。なにより、長兵衛ともっと丁々発止でやり合う場面があったほうがしのぶさんにもっとしどころがあったと思うのよね。

前の幕でお姫様だった新吾が文七を演じる。立役も女形もこなせる容姿で声もいいのよねぇ。後ろの席の人が終演後、近江屋の彌十郎さんが新吾の実の父親だときかされて驚いていた。孝太郎の角海老女将が鉄火肌で、これまでの女将とだいぶ印象が違うけれど、これはこれでとても良かった。玉太郎のお久に國矢の藤助、菊三呂と蝶紫の長屋の女房たち、片岡亀蔵の大家もそれぞれ好演。

迷った末に夜の部はパスしたので、15時半過ぎの終演後、北千住で寄り道。まず駅構内のスタバで図書館で借りた村田沙耶香さんの2冊目「消滅世界」をキリのいいところまで読み、ルミネの無印良品フランネルのロングシャツを買い、食事も済ませて帰るつもりがお腹が空かなくて、そのまま帰宅。

ありもので夕食を済ませた後、録画しておいた夕べのプレミアムシアターを観る。2023年ザルツブルク音楽祭での「ドイツ・レクイエム」と、2020年の同音楽祭で上演された「コジ・ファン・トゥッテ」。観ながら整経の続き。夕べ、1本余るはずの経糸が余っていないことに気付き、やっぱりタイアップの段階で間違えていたので、そのやり直しから、スクエア型の模様をひとつ織り終えたところまで。本の写真ではくっきりと浮き上がっている模様がまったく目立たないんだけど、織り機からはずしたら浮き上がってくれるのかしらん。不安しかない。