まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

五月大歌舞伎

緊急事態宣言の影響で初日が12日にずれ込んだ歌舞伎座。5月なのに團菊祭ではないのが寂しいものの、予定どおりに観劇できること、それだけでもう感謝しかない。早めに家を出て、北千住のスタバで軽く腹ごしらえをしてから東銀座へ。

第一部の幕開きは「三人吉三巴白浪」で、右近のお嬢、隼人のお坊、巳之助の和尚に莟玉のおとせ。右近も巳之助も口跡が良いし、普段は台詞が重く感じる隼人も二人からいい影響を受けたみたいで、三人ともなんかこう突き抜けたような心地よさがあり、何度も観ているのにとても新鮮に感じた。黙阿弥調の台詞を楽しむ作品なんだなぁ、とあらためて実感。

次の「土蜘」は、松緑の土蜘の精と猿之助源頼光が対峙し、頼光のそばに太刀持ちとして控えているのが眞秀くん。小姓の衣装がよく似合い、凛々しい。松緑は僧として現れる場面でも不気味さを漂わせ、ぎょろりとした目がさらに効果的。坂東亀蔵の保昌に新吾の胡蝶、四天王には福ノ助、鷹之資、左近、弘太郎。蜘蛛の糸はやや控えめな印象。

完全入替制なので外へ出て、ナイルレストランでムルギーランチ。残った時間は歌舞伎座地下の木挽町広場をうろうろ。舞台写真の販売が通販だけになっちゃったのが残念だなぁ。写真上部の緑の物体は、道成寺の鐘に見立てたバルーン。

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第二部は「仮名手本忠臣蔵」から、まず「道行」を錦之助の勘平、梅枝のお軽、萬太郎の伴内で。そのあと「六段目」を菊五郎の勘平、時蔵のお軽、東蔵のおかや、魁春のお才に橘太郎の源六、左團次さんの数右衛門に又五郎の弥五郎という豪華な配役。六段目はもう何回観ているのかなぁ。その中でも勘平は菊五郎が一番回数が多いんじゃないかしらん。そして菊五郎の勘平が一番好き。

再び劇場の外へ出て、スタバでワンモアコーヒーを、と思ったらなんと感染者が出て一時休業。あらまぁ。仕方がないので木挽町広場に戻り、タリーズへ。積ん読本の中から行きの日比谷線で読み始めた松井今朝子「吉原手引草」の続きを読み耽る。

第三部の「八陣守護城」は、療養中の吉右衛門に代わり歌六の正清に雀右衛門の雛衣。物語の一部だけを取り出しているので筋が分かりにくく、どうしても巨大な御座船ばかりが印象に残ってしまうのよね。歌六さんのせいじゃない。

そして今日最後の「春興鏡獅子」。まず舞台に並んでいるのは楽膳、彦三郎、萬次郎、米吉の4人で、萬次郎の老女と米吉の局が弥生を呼びに行き、続いて彦三郎の用人が楽膳の家老に手を差し伸べ「大事ござりませんか。ゆるゆるとお立ちなされませ」と立つのを助けるのがとても自然でよかった。菊之助の弥生/獅子の精に、菊之助の息子の丑之助と彦三郎の息子の亀三郎の胡蝶。獅子に変わってからはわずか十数分で、いつもは弥生の踊りを長く感じてしまうのに、今回は違った。何度となく観ているはずの菊之助の弥生が踊りに疎い私にもはっきり分かるぐらい成熟していて、所作のひとつひとつが美しく、ため息が出ちゃうぐらい。胡蝶の踊りも良かったなぁ。よくもまぁ、こんなに長い踊りの所作を覚えるだけで大変そうなのに、途中で頭が真っ白になったりしないのかしらねぇ、とド素人はつい考えてしまう。日舞を習っていた亡き友人に思いを馳せたりもしたひととき。

来月の歌舞伎座もどうか無事に公演できますように。