まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

三月大歌舞伎

シャッキリと起きて東銀座の歌舞伎座へ。まずは地下の木挽町広場。昼の部と夜の部の間の食事に重宝していた歌舞伎茶屋さんがなくなり、あとにまた飲食店が入るといいなぁ、と思っていたのに服の売場になってしまい、がっかり。以前から目にしていた和傘を下から覗いてみたら、だいぶ傷んではいるものの光の加減もあってキレイだったので撮ってみた。あとはいつもの日めくりの写真。

昼の部の最初は「寺子屋」。愛之助の源蔵に新悟の戸浪、菊之助の松王丸に梅枝の八重、丑之助の小太郎に萬太郎の玄蕃。子供が犠牲になる悲しい話ではあるものの、何度観ても胸に迫るものがあり、物語としての巧みさを見るたびに思う。私の世代から見れば若手の上演ということになるのだけれど、今後はこの世代が主流になっていくのよね。「100年インタビュー」で菊五郎さんが若い世代に忠臣蔵をやらせたいと話していたのを思い出した。

続く「傾城道成寺」は四代目の雀右衛門の十三回忌追善で五代目が踊る。先月は勘三郎の十三回忌追善だった。同じ年に亡くなったんだっけ? と調べてみたら、雀右衛門が2月で勘三郎が12月。雀右衛門の享年は91で勘三郎は57。ため息が出ちゃう。傾城清川は実は清姫の霊で、松緑が演じる安珍平維盛の世を忍ぶ仮の姿。導師として菊五郎が登場し、亀三郎・眞秀くんの童子が可愛らしい。

今月一番楽しみにしていたのが昼の部最後の「御浜御殿綱豊卿」。仁左衛門の綱豊卿が素晴らしい。歌六が演じる新井白石赤穂浪士について語り、「討たせたいなぁ…」とその一言から伝わる深い思い。幸四郎が熱演する助右衛門との息詰まる問答の直後、ふっと肩の力を抜いて高らかに笑う、その瞬間、春風が吹き抜けていくような爽快感。孝太郎の絵島、梅枝のお喜世、萬次郎の浦尾もそれぞれに良かった。

再び木挽町広場。舞台写真をひととおり見て、もうなるべく買わないつもりだったんだけど、「寺子屋」で涎くりの鷹之資の父親役の橘太郎をおんぶしている花道の1枚が他の写真とは角度も光の具合も違い、二人の笑顔もなんとも言えず良いので買ってしまった。

夜の部は「伊勢音頭恋寝刃」の通し。いつもの油屋の場面に至るまでが上演される。でも正直、普段めったに上演されないのが納得という、あまり喜ばしくない結果になってしまった。役者のせいではなく、作品そのものの問題だと思う。大切な刀を紛失してお家没落の危機にあるはずの万次郎が呑気すぎるし、万次郎のために奔走する貢がようやくその刀を取り戻すが、油屋で多くの人を斬り殺してしまう。そんなこんなで共感できる部分が少ないせいか、どうも入り込めないのよね。菊之助の万次郎、幸四郎の貢、雀右衛門のお紺、彌十郎のお鹿ほか、それぞれに悪くないし、魁春の万野も嫌味たっぷりでいいんだけど、なんかこう、観ていて気持ちが上がってこない。

そのあと松緑の「喜撰」で、相手役のお梶は普段から仲の良い梅枝が勤め、たくさん出てくる所化の中に二人のそれぞれの息子に亀三郎・眞秀くんも加わり、賑やかに幕。

20時45分頃の終演後、急いで駅へ。ギリギリで終バスに間に合い、帰宅後ひと息ついてからすぐに英訳の続き。もう夜更かししても大丈夫なので、錦織圭くんの復帰戦がスタートする午前1時まで、というつもりでいたら、試合開始が2時間ずれ込み、そこまで夜ふかしするはずじゃなかったんだけど、と思いながら結局、試合の最後まで観てしまった。ランキング40位のオフナーに残念ながらストレート負けを喫してしまったけれど体調は良さそう。今後に期待!