まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座 昼の部

芸術祭十月大歌舞伎の昼の部は、「廓三番叟」で幕を開ける。夜の部から先に観ると、途中で三番叟みたいな感覚になっちゃうんだけどね。扇雀の傾城に梅枝の新造、巳之助の太鼓持ち

「御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)」は、歌舞伎十八番の「勧進帳」のパロディみたいに思われているけれど、もともとは十八番の「勧進帳」よりずっと昔に成立している作品。弁慶が関所の役人たちの首を大きな桶に投げ入れ、「芋洗い」と称してかき回すと、今度は桶から次々に首が飛び出してきたり、お世辞にもセンスがいいとはいえない真っ赤な衣装の胸に、大きな白い丸に「弁」の文字が黒々と大書されていて、弁慶だと名乗っているかのようなのに、自分は弁慶ではないと言い張ったりと、十八番にはないおおらかさがみどころ。豪放磊落な弁慶を松緑。声はつらそうだったけど、稚気も感じさせてよかった。坂東亀蔵義経愛之助の富樫ほか。

続いて、愛之助が五変化を見せる「蜘蛛糸梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」。五変化の最初の小姓の場面では、右近が坂田金時を演じている。昼の部でも夜の部でも女形の役でも出ているのに、赤っ面まで。それがまったく違和感がないんだからすごい。

五変化の最後は土蜘蛛の精で、何度となく放たれる蜘蛛の糸を回収するのに後見さんたちが大忙し。客席にも何度も糸が飛んできて、コツンと小さく当たったので手にとってみると、細い細い糸の先にアルミかなにか細くて小さな円筒状の金属片が接着されていた。

最後が「江戸育お祭り佐七」で、今月初めに喜寿を迎えた菊五郎の佐七に時蔵の小糸。お祭りの場面で、彦三郎の息子亀三郎くんのお軽と寺島眞秀くんの勘平に橘太郎の伴内が絡み、なんとも可愛らしい踊りと立ち回りで楽しませてくれる。拍手喝采

江戸っ子のお手本のような音羽屋の粋な姿に惚れ惚れ。さりげない日常の仕草のひとつひとつ、決め台詞ではない、ふとした言葉のひとつひとつがもうとんでもなく魅力的なのよねぇ。鳶の佐七が頭の上がらない鳶頭を左團次さん ♪

小糸に横恋慕する侍を團蔵、小糸を金づるとしか思っていない養母を橘三郎、その二人に与する悪党を片岡市蔵亀蔵の兄弟。佐七を兄貴と慕い一緒に暮らしている三吉を演じているのは坂東亀蔵で、彼は夜の部の三人吉三でも和尚と暮らす堂守を演じていて、同じような役でもしっかりと演じ分け、飄々としていてさりげないのがいい。

親に騙され、恋人には誤解されたままで殺されてしまう小糸さん。可哀想すぎる。

木挽町広場になぜか二代目猿之助の「黒塚」岩手の像。思わず写真を撮ったけど、なぜ今月これが飾られているのか、急いでいてチェックできなかったのが心残り。

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