まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

読 了

今日は本多劇場加藤健一事務所の公演、と今朝までそのつもりでいた。卓上カレンダーに「カトケン」と書いてあったから。支度をしようとしてチケットを確認したら、日付が明日になっている。そういえばカトケンさんの公演の千穐楽は大抵、日曜日だったっけ。手帳からカレンダーへの記入ミス。土曜日のチケットなのに日曜日と牡蠣間違えたんじゃなくて良かったー。

というわけで、急にぽっかり予定があいたので、コメダ珈琲で読書。「空白を満たしなさい」を読み終えた。読み応え十分だったなぁ。最後まで思い出せなかった配役をネットで調べたら、妻は鈴木杏さん、勝手にでんでんさんに脳内変換していた工場長はうじきつよしさん、主人公の元上司を渡辺いっけいさん、転職先の店長は萩原聖人さんだった。思い出せなかったのは、主人公の柄本佑さんと佐伯役の阿部サダヲさんの2人の演技が圧倒的だったからかもしれない。

以下ネタバレになるけども、死んでしまった人が突然「復生」して戻ってくる事例が頻発しているという設定で、主人公の徹生も一瞬の気の迷いで自殺をしてしまい、3年後に復生した時には自殺をした記憶がなく、佐伯に殺されたと思いこんでいる。そこから真相を究明していく物語。

自殺に追い込まれた原因は日々のストレスで、お酒やギャンブルで発散することなく、仕事に打ち込んで打ち込んで限界まで疲労することで自己肯定感が上がるという感覚は私にも覚えがある。ちょうど主人公と同じ30代半ばの頃、残業と休日出勤が続き疲労していてもやる気満々の状態で、微熱や時折り心臓がキューンとするような症状がありながら仕事を続けていた。周囲に説得されて病院に行き、身体のストレスと精神的なストレスはまったくの別物で、あなたは仕事が楽しくてストレスを感じていなくても身体は悲鳴を上げている状況だから、納得できないなら今週末、何もしないでただベッドで休んでいなさいと言われ、半信半疑でその通りにしたらケロリと治ってしまった。私は一人暮らしだから自分でやりたいことしかやっていなかったけれど、徹生には家族がいて、仕事のストレスを抱えたまま家族と過ごすことで、楽しく過ごしているつもりでも日々のあれこれは疲労として積み重なっていき、ある日突然、コップから水があふれるように限界を超えてしまう。決して本心から死にたいと思ったわけではない。その点がとてもリアルに感じられた。

物語の終盤、復生した人たちが次々に姿を消し始める。大切な人が戻ってきた喜びもつかの間、再び亡くす悲しみを家族や周囲の人に味合わせてしまうという苦悩。復生者が社会にすんなり受け入れられるわけではない現実も描かれている。

私の知人にも、古くは中学時代の同級生に遡り、自ら命を断ってしまった人が何人かいる。そうした人たちも最後の瞬間には徹生のように後悔して「生きたい!」と願っていただろうか…。あらためて悼む思いを込めて、お花の写真。