まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

新春浅草歌舞伎

今年の初歌舞伎は浅草公会堂で新春浅草歌舞伎。行きには北千住駅構内のスタバで、マフィンサンドを温めてもらい、ドリップコーヒーと一緒に軽い腹ごしらえ。

以前は出演者が日替わりで年始の挨拶をするのが浅草恒例だったんだけど、コロナ禍の影響で3年ぶりの開催となった今回は、その挨拶もアナウンスのみ。テンプレがあるようで、各自が出演する役の紹介部分以外はほぼ同じ。以前はそれぞれ個性的な挨拶が楽しみだったので、ちょっと残念。

第1部の最初は「引窓」。橋之助の濡髪長五郎、隼人の南方十次兵衛、新悟のお早、吉弥の母お幸。この作品の独特なしっとりとした味わいが出るところまではいかなかったけれど、フレッシュな顔ぶれで真摯な舞台。

休憩の間に新悟が白拍子に変身し、巳之助と並んで「男女道成寺」。二人とも手足が長い今どきの体型ながら、揃っているのでバランスがいい。こちらも真摯で真っ直ぐな踊り。気持ちがいい。

第2部までの間に、葵太夫さんがブログで紹介していらした鴨南蛮がとても美味しそうだったので、雷門から歩いてすぐの並木藪さんへ。事前にメニューを確認せずに行ったら、鴨南蛮は2100円の高級品。ちょっと迷ったけどお正月だし、と初志貫徹。こんなに分厚いのは初めて、と驚くほど存在感のある鴨肉がたっぷりのっていて、肉団子も。これなら納得のお値段。美味しかったー。

浅草寺にお参りを、と混雑する仲見世を避けて脇道を抜けていったら、本堂前は長蛇の列。初詣はひとまずあきらめ、再び公会堂へ。

「吃又」って、役者にとってやりがいがある作品なのか、よく出るんだけど、何度見ても納得がいかずにモヤモヤしてしまう。吃音の絵師、又平が妻とともに師匠宅を訪れ、弟弟子が土佐の名字を許されたことを知り、自分にもどうか、と懇願するが受け入れられない。それを吃音のせいだと絶望する夫婦。ここでもうダメ。だって絵を描く才能に吃音は関係ないでしょ。また、弟弟子は絵から抜け出た虎を描き消した功で、又平は絶望の余り命を断つ前に、と石塔に描いた自画像が反対側に映り出たことを功として土佐の名字を許される。いやいや、絵師は奇術師じゃないんだから。そして最後に、又平も弟弟子に続いて姫の救出に向かう。絵師がなぜ戦いの場に? 武術の心得もないだろうに、と毎回、思ってしまうんである。

でもこうした諸々は役者のせいではないので置いといて、歌昇の又平に種之助の妻おとく。実の兄弟が夫婦を演じる。歌昇の又平は、しょげ返っている前半と名前を許された後の嬉しくて仕方がない様子の対比が鮮やかだったし、種之助のおとくも甲斐甲斐しくてとても良かった。弟弟子を莟玉、師匠夫婦を吉之丞と歌女之丞。主家の難事を知らせに来るのが座長の松也。花道から駆け出てきた瞬間「でかっ!」と思ってしまった。白塗りで手足むき出しという衣装のせいかもしれない。

最後は「連獅子」。大きな松也と小柄な莟玉のバランスが絶妙。狂言師として演じる前半は二人とも凛として気品があり、獅子に変わっての後半は、まさに獅子奮迅。特に最後の毛振りはもう気合でぶん回している感じで熱量がすごく、松也のほうを数えていたら実に72回! 幕が閉まったあとにフラフラしちゃったんじゃないかしらん。間狂言歌昇・種之助。夫婦役から一転して軽妙洒脱。

浅草歌舞伎の再開をあらためて喜びながら公会堂を後にし、伝法院通りを抜けて再び浅草寺へ。すでに本堂の扉は閉まっていて、お賽銭箱だけ出ている状態。それでも昼間ほどではないとはいえ長い列ができていたけれど、これを逃すと初詣の機会がなさそうなので並んでいたら、警備員さんが出てきて「もっと横に広がって並んでくださーい!」とひと声。それまで駅のエスカレータを待つように2列で並んでいたのが一気に広がり、スムーズにお参りができた。

昼も夜も華やかな振袖姿のお嬢さんたちがたくさん。ただ美しい振り袖を見せるためなのかほぼ全員、羽織を着ていなくて、終始、風が強かったから寒そうだし、長い袖がビュンビュンと煽られ、写真を撮るのが難しそうだった。

帰りに再び北千住のスタバに寄り、図書館で借りた「13歳からの地政学」を読み終えた。こちらも「すばらしい人体」と同じくらい付箋がいっぱい。

20時半近くに帰宅。22時から新たにスタートしたドラマ「大奥」がよしながふみさん原作の世界をほぼ忠実に再現していてとても良かった。時代劇は初体験ながらいつかやってみたくて乗馬や剣術を習っていたという冨永愛さんが吉宗にピッタリ!