まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

秀山祭

中村吉右衛門三回忌追善の秀山祭大歌舞伎。その軸となるはずの幸四郎が昨日から体調不良で休演し、2つの役をそれぞれ菊之助勘九郎が代役。月と桜の緞帳は初めて観た。今までの緞帳の中で一番好み(写真はちょっと傾いてしまった)。

昼の部の最初は「祇園祭礼信仰記」より「金閣寺」。今月前半は米吉が演じていた雪姫を後半の今日は児太郎。勘九郎の久吉、福助の慶寿院、歌昇の正清に、歌六の松永大膳。私の中では歌六さんは悪役のイメージがないのに、今月は、夜の部の「車引」でも時平を演じていて、不足なく演じていらしても、なんかこう、もったいないような気がしちゃうのよね。もっと違う役のほうが、と思ってしまう。もっとも、こうした大悪人を演じることができる人が少なくなりつつあるのが現状だからなぁ。

続く「土蜘」で土蜘の精を菊之助が代役。といっても去年5月の團菊祭で大評判を取った役だから、危うさはまったくない。錦之助の保昌、又五郎の頼光、魁春の胡蝶。児太郎が前半で演じた巫女を米吉。菊之助は善人の役ももちろんいいんだけれど、悪の魅力も光るようになってきたなぁ。

昼の部の最後は「二条城の清正」。白鸚の清正が染五郎の秀頼に切々と語る。その台詞があまり聞き取れないのが残念だけれど、まぁ、この作品は清正の秀頼への想いが伝わればそれでいいのだろうから。錦吾の平次で、高麗屋3人だけの一幕。

夜の部までの間はタリーズで過ごし、舞台写真は、当然ながら代役の分は含まれていないこともあり、これから観る夜の部の「連獅子」の前シテの写真を1枚だけ購入。

夜の部最初の「車引」がいつになく面白かった。最初、桜丸と梅王丸が傘を被って出てきたとき、台詞を聴いていても誰だか分からず、傘を取って初めて種之助と歌昇だと分かってビックリ。特に歌昇はどちらかと言えば小柄だから、梅王丸をやるとは思っていなかった。なのに驚くほどの力強さと躍動感。腰を十分に落として決まる姿勢は美しく、エネルギーに満ち溢れている。台詞も立派。こういう役もできちゃうのねぇ。頼もしい! 今月は、「土蜘」に自分も番卒のひとりとして出ながら、彼の二人の息子も太刀持ちと石神として出ているから、お父さんとしても大忙しかな。鷹之資の杉王丸に、種之助と歌昇の父親である又五郎が松王丸を貫禄十分に演じる。それぞれに好演で台詞もよく通り、大満足の一幕。

流れで言えば「一本刀土俵入」をはさんで「連獅子」で終演のほうがおさまりがいい気もするけれど、終演時刻が20時を過ぎてしまうので、丑之助が子獅子を演じる「連獅子」を先にせざるを得なかったのかな。深読みしすぎ?

丑之助はまだ9歳。勘太郎も9歳のときに同じ子獅子を演じ、私が観た日がちょうど10歳の誕生日だったから、丑之助のほうが最年少ということになるらしい。そのせいかどうか分からないけれど、運動があまり得意じゃないのかな? と思わせる危うさが所作によってはあったものの、なによりその一生懸命さがひしひしと伝わってくる。最後の毛振りは15回前後と少なめながら、毛の流れはとても美しかった。今後が楽しみ。間狂言は彦三郎と種之助。

そして最後は「一本刀土俵入り」。勘太郎も何度か演じたことがある役なので、代役とは思えない安定感。お蔦を雀右衛門、その亭主を国立劇場との掛け持ちで松緑が演じる。船戸のヤー公はすっかり吉之丞のはまり役になってきた。船大工の場面で、老船頭を東蔵。この場面を観るたび、芦燕さんを懐かしく思い出す。お蔦が茂兵衛にお金だけでなくかんざしや串まで上げようとする場面で、もう何度も観ているのに、涙ぐんでしまった。染五郎の掘下根吉も良かった。

今月、彦三郎が「連獅子」の間狂言だけの出演なのがもったいなさすぎる。なにか別の仕事が入っていたのかな。亭主役の松緑に不足はまったくないとはいえ、掛け持ちさせるぐらいなら彦三郎でも良かったんじゃないかと。

帰宅後、録画予約の関係で「遺留捜査」スペシャルが後半だけ予約されていたので、TVerで最初から見る。科捜研の村木さんにそっくりな人が登場するという設定は面白いけど、肝心のストーリーにはまったく関係なかったから、無理くりな気もした。

最近どうも洗濯機の調子が悪いので購入時期を調べてみたら、2009年10月とほぼ14年前だった。耐用年数の2倍ぐらい使っていることになる。調子が悪くなるのも無理はない。買い替えを検討しないと…。