まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

maru992017-12-25

クリスマス当日の今日は、クリスマスとは無関係に純和風の歌舞伎座へ。今月は三部制で、2日に分けるとどれか1部だけを見る日を物足りなく思ってしまうので、通しで観ることにして、たまたま3部とも同じ席が取れた。

第一部の幕開きは「源平布引滝」より「実盛物語」で、実盛を演じるのは愛之助。なるほど、ロビーに藤原紀香さんの姿があった。松之助の九郎助、吉弥の小よし、門之助の小万、笑三郎の葵御前、片岡亀蔵の瀬尾。吉弥さんはまだ若くてお美しいのに、最近は老け役が多くてちょっとお気の毒。それだけ老け役の払底が深刻なんだろうなぁ。しどころの多い太郎吉を演じた子役の子がとても可愛らしかった。

続く「土蜘」は松緑で、僧の姿で花道から引っ込む場面の決まりの形が良かった。ぎょろりとした目が活きる役。梅枝の胡蝶に、太刀持を松緑の息子の左近、石神を彦三郎の息子の亀三郎。まだまだ幼い新世代。僧から蜘蛛の精に変身した後は、放射状に美しく広がる蜘蛛の糸が見どころで、今これを手作りできるのは音羽屋一門の音吉さんただひとりと伺ったことがある。機械で作ったものもあるにはあるものの、使い勝手も投げた後の広がり方も手作りには遠く及ばないという。1つ作るのに相当の時間がかかるのに、1回の舞台で十数個を使うのだから、1か月では3百以上。専門の職人さんではなく、舞台を務めながら製作するわけだから、いかに大変か。誰か引き継いでくれる人がいるのかしらん。心配になってしまうわぁ。

幕間も休憩時間もネックウォーマーを編む作業に専念し、15時から第二部。「らくだ」はこれまで江戸版しか観たことがなく、今回は関西版だったので新鮮だった。愛之助が実直な実盛から一転して怖いお兄いさんの熊五郎を演じ、熊五郎に脅され言いなりになりつつ、後半では酒癖の悪さで大胆になる屑屋の久六を中車。最初から死体として横たわっている「らくだ」こと宇之助はもちろん亀蔵さん! 橘太郎の大家と松之助の女房の「のみの夫婦」も良かったなぁ。爆笑に次ぐ爆笑。

続いて「蘭平物狂」。かつては三津五郎が当たり役にしていて、今は松緑が引き継いでいる。主君に反旗を翻した父に縄をかける役目を負った息子を左近。実際の父子が舞台の上でも父子を演じているものだから、ついほろりとしてしまう。太刀持ちでは台詞がなかった左近くんのしっかりした演技に、いつのまにかもうこんなに大きくなったのねぇ、とすっかりオバサン目線。見どころの立ち廻りは、大怪我の危険性がある難しい技がいくつかあるので、どうか無事で、と祈りながら見ていた。どれも大成功で拍手喝采。立ち廻りの顔ぶれもどんどん世代交代しているのねぇ。

再び2階ロビーのソファで編み物に勤しみ、18時半から第三部。「瞼の母」の番場の忠太郎を中車。母親は吉弥さんかしらん、と思ったら玉三郎だった。想いが届かずすれ違ってしまう母子と対照的なもうひとつの家族を彦三郎の半次、児太郎の妹、萬次郎の母親。半次を狙う二人組を八大・咲十郎が演じていて、普段はほとんど台詞がなく縁の下の力持ちに徹している彼らの活躍が嬉しかった。

最後は玉三郎の「楊貴妃」。これがあるから、まさかそのすぐ前の幕で「瞼の母」の母親を演じるとは思わなかったんだけど、法師の役は中車が演じていて、わずか30分の休憩時間に衣裳もメイクも変えて、まったくの別世界を創り出してしまうんだものねぇ。玉三郎楊貴妃もいつか描いてみたいなぁ。

というわけで、大満足の「歌舞伎納め」だったんだけど、その間に請求書の修正依頼のメールが届いてどっひゃ〜ん! 帰宅後すぐに修正作業。明日忘れずに投函しないと。