涼しそうなので長袖を着込み、歌舞伎座へ。九月大歌舞伎。行きの電車の中で、図書館で借りた浅葉なつ「神様の御用人」9巻を読み始める。8巻まで一気に読んだあと、半年近く順番待ちだった。アラハバキの神。どこかできいたような… と思いながら読み進むうち、東銀座に到着。
第一部の最初「お江戸みやげ」に福助が登場。3年前の復帰後、座っているだけの役だったり台詞もなかったりしたのに、今回は、発声はゆっくりだけど台詞もたくさんあったし、自分の足で歩いて退場。まだ右半身の麻痺は残っているし、ぎこちなさは当然あるものの、ここまで回復したんだなぁ、と胸が熱くなると同時に、失われたものの大きさを思う。「浮かれ心中」などのコミカルな作品で、勘三郎を相手にポンポンと早口でまくし立てる福助の威勢のいい口調が今も耳に残っているものだから…。
堅物でしまりやのお辻を芝翫、相方のおゆうを勘九郎、お辻が惚れ込んでしまう宮地芝居の役者を七之助、福之助・歌之助兄弟の角兵衛獅子と、福助の近親者がそろった舞台。女形は珍しい芝翫が実の息子たちである角兵衛獅子に「親を大事にしなさいよ」と繰り返し言う場面もあったりして、分かる人だけ大受け。娘を金持ちに嫁がせて大金を手にしようと目論む業突張りな母親が行商人の全財産の十数両で納得したのか、1年分の稼ぎをお酒の勢いで役者のために手放してしまったお辻は暮らしていけるのか、心配になったりするけども、ほっこりと温かく切ないこの作品、好きなのよねぇ。莟玉のおこん、梅花のお長、東蔵の文字辰、松江の鳶頭といずれも好演で、酒好きの女形を演じる芝のぶくんも良かった!
舞踊の「須磨の写し絵」は、業平を梅玉、松風・村雨の海女姉妹を魁春・児太郎。二人の大先輩を相手に、児太郎くん、緊張気味だったかな。
いきなりステーキ銀座店の閉店後、毎回ナイルレストランというのも芸がないので、どこかにいいお店はないかしらんと歌舞伎座周囲を歩き、喫茶YOUは人気で列ができていたので、すぐ近くの半地下にある Brita という店に初めて入ってみた。店内に5周年を祝う飾り物。そんなに前からあるなんて、気付かずにいたなぁ。4種類のランチメニューの中から、10食限定の極上ローストビーフ丼にしてみた。美味しい! サラダとお味噌汁がついて950円。他の3つのメニューも魅力的だったから、来月もまたランチはここかな。
第二部の「盛綱陣屋」では、丑之助が小三郎、亀三郎が小四郎。時節柄、出演していない役者は父親でも楽屋に入れない状況で、亀三郎の具足やら鎧やら出陣のためのフル装備をお弟子さんたちが数人がかりで整える様子をパパの彦三郎がSNSに投稿していて、客席からは見えないところで多くの人が立ち働いているのよねぇ、と感慨に耽ったりする。丑之助くんは舞台でいつもとってもお行儀がいい。幸四郎の盛綱、歌六の微妙、雀右衛門の篝火と大先輩が揃う中、早瀬を演じる米吉くん、丸顔な印象なのが痩せたのかシュッとした細面で、一瞬誰かと思っちゃった。
第一部と同様に舞踊が続き、時蔵の「女伊達」。廓ものでおなじみの中央に桜が咲き誇る華やかな仲之町を背景に、萬太郎・種之助の若い衆が打ちかかり、立ち廻りになる。その際「よろずや」と書かれた和傘を使うのだけれど、たくさんの傘がぴったりと文字の位置をそろえて並び、そのあとクルクルと回るのが壮観。
仁左衛門・玉三郎コンビの魅力で1枚残らず売り切れている第三部の「東海道四谷怪談」は都合によりパスしてしまったので、16時半すぎの終演後、自宅の最寄駅まで戻ってからコメダ珈琲で読書の続き。「神様の御用人」9巻を読み終えた。ところがこの9巻、長編の前半! 早く10巻、借りてこなくちゃ。
「ハコヅメ」も最終回かぁ。毎週よく笑わせてくれたなぁ。面と向かってマウンテンメスゴリラ!だなんて、相手が美人の戸田恵梨香だから笑って済むけど、美醜のコンプレックスがある人に言ったら傷つけちゃうよね。