まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

初春海老蔵歌舞伎

新橋演舞場で11時開演のつもりで家を出て、途中で11時半の間違いだと気付き、北千住のスタバで時間調整。

すべての最前列と、花道脇も内側は4列、外側は3列を空席とし、花道脇のブロックは並びの2列を残すのみ。その他のブロックはすべて1席おきだから、すべて埋まっても半分以下。当然ながら売上も減るわけで、そんな状況でも上演してくれていることに感謝。

幕開けの舞踊「春調娘七種」では、児太郎の静御前に、壱太郎・右團次の曽我十郎・五郎兄弟。静御前は赤姫の衣装で、兄弟は白の衣装に赤隈で、初春らしい色彩。

次の「毛抜」で、前の幕で姫だった児太郎は若衆の秀太郎に、若衆だった壱太郎は腰元巻絹に代わり、二人の若女形がそれぞれに演じ分ける。敵役の多い男女蔵が忠臣民部に、右團次が敵役の玄蕃に回り、玄蕃の倅数馬を九團次、斎入のお殿様に廣松の若様、玄蕃に与する悪党万兵衛を市蔵。海老蔵の粂寺弾正は、ところどころ台詞回しや表情にやりすぎ感があるものの、愛嬌たっぷり。そして何より、決まりの型だけでなく、ひとつひとつの所作、もっと言えばもう何もしていなくても、ただそこにいるだけで絵になるのよねぇ。それがすごい。

福太郎くんのお姫様はまだまだ台詞がおぼつかないものの、なんといっても19歳。これからこれから。そのお姫様の櫛笄が銀に見せかけた鉄製で、天井裏で磁石を操り、お姫様の髪が逆立つというからくり。いくら櫛笄が磁石に引きつけられても、後ろに長く垂らした髪が逆立つわけはないのよね。しかも方位磁石。鉄と引き合うこともない。これをあえて普通の磁石に替えたのを観たことがあるけど、ただのグレーの塊で磁石だと分かりにくく、それであえて方位磁石にしたのか、と納得したっけ。

シメは、市川ぼたん(麗禾ちゃん)の「藤娘」と、カンカンこと勸玄くんの牛若丸にパパの弁慶による「橋弁慶」。6年前には、八千代座で大泣きし、くまモンになだめられても泣き止まず、パパに抱かれて舞台に上がった麗禾ちゃんがまだ9歳の今、広い演舞場でたったひとりで「藤娘」を踊っている。小さな手の指の動きも美しい。お稽古で涙していた姿をテレビの密着番組で見ていたから、もうね、どうにも胸が熱くなってしまう。そしてカンカンの凛々しいこと。パパに甘えるちびっ子の姿とは別人。小さくても役者なのよねぇ。「毛抜」では白塗りに隈取だった海老蔵が眉と目の周りだけのシンプルな化粧で、それ以外はほとんど素顔同然。小さな足でトコトコと花道を入るカンカンを見守る弁慶は父親の眼差し。

劇場では舞台写真の販売がなく、後日ネットで販売するそうな。そうなると面倒で買わないかもー。

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