まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座 昼の部

先月に続く市川海老蔵改め十三代市川團十郎白猿襲名披露興行の昼の部。長いこと3部制が続いていたし、先月も同じ日に昼夜通しで観たから、昼の部だけというのはとてもとても久しぶり。

今月の祝い幕は、團十郎家の替紋である牡丹の花をモノトーンで描いた渋い幕と、親子のゴジラの幕の2種類。ゴジラの足元の黒い部分は人々で、ひとりひとり丁寧に描かれているし、左側の建物は歌舞伎座。ただ、先月の祝い幕のインパクトが強烈だったので、どうしても地味に見えてしまう。披露する順番を先月と逆にしたほうが良かったんじゃないかな。

昼の部の始まりは、幸四郎の名古屋山三と松緑の不破伴左衛門の諍いに猿之助女形の姿で止めに入る「鞘当」。偶数日は中車が立役として止めに入る。線の細い二枚目の山三と骨太な敵役の不破にピッタリな配役。

続く「二人道成寺」は勘九郎菊之助がともに白拍子花子を演じ、最後に押し戻しとして新團十郎が登場する。二人道成寺は「シネマ歌舞伎」にもなっている玉三郎菊之助の舞台の印象が強く、当然ながらそのときとはまったく違うんだけど、フレッシュで、真摯で、濃密さもあって、とても良かった。特に菊之助の表情がなんとも魅力的で、瞳の奥に計り知れない深遠な世界が広がっているかのような…。

そして最後に、勸玄改め八代目新之助が粂寺弾正を演じる「毛抜」。知略に優れ、若衆にも腰元にも色目を使う場面もある難役で、弾正が口説く腰元を雀右衛門、若衆を児太郎、忠臣の民部を錦之助、敵役の玄蕃を右團次、小野の殿様を梅玉、その息子を新悟、息子に妹を殺されたと難癖をつけに来る万兵衛を芝翫、玄蕃の計略で髪が逆立つ奇病に思い悩む姫様を廣松。これだけの大先輩を前に、色ごとの場面では際どい台詞も少なくなく、新之助がそれをどこまで理解しているか分からないものの、よく通る声で長台詞も淀みなく表情も豊か。本当によく稽古したんだろうなぁ。健気で立派。でもやっぱり、襲名披露の演目としてふさわしかったかどうかは疑問。

終演後、やっぱり早く元通りの昼夜二部制に戻るといいなぁ、と思った。でも1月からまた三部制に戻っちゃうのよねぇ。

帰りに北千住駅構内のスタバで「すべてがFになる」を読み終えた。十分に面白かったけれど、私が理系の人間だったら、よりいっそう楽しめたんじゃないかと。