まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

新国立劇場「紫苑物語」

f:id:maru99:20190224134953j:plain


OTTAVAの林田さんがSaloneで絶賛オススメしていたので、聴きながら即、ネットでチケットを取ったのが新国立劇場の日本語による新作オペラ「紫苑物語」。歌舞伎の新作や演劇の舞台は通常、なるべく事前情報を入れずにまっさらの状態で臨むようにしているのだけれど、オペラの場合、物語の筋を追うために歌詞に集中してしまうと音楽の魅力を堪能できない可能性があるので、石川淳の原作を電子書籍で事前に読んでおいた。これが大正解。

大野和士さんの指揮で演奏は東京都交響楽団。作曲は西村朗さんで、前奏からもう原作の雰囲気にピッタリ。笈田ヨシさんの演出には様々な工夫があり、平安時代の物語なのにメタリックな装置が意外なほど違和感がなかったし、一面の鏡に客席が映し出された場面では、蜷川さん演出の歌舞伎「十二夜」を思い出した。物語の鍵となる弓矢が真っ赤だったのも象徴的で効果的。

原作では、主人公の妻「うつろ姫」は台詞がなく、描写だけで存在感たっぷりの重要な役なのだけれど、オペラでは、台詞=歌詞がないと歌手の腕の見せどころがないので饒舌にならざるを得ず、それだけで役のイメージが様変わりしてしまう。オペラの性質上、仕方ないんだけど。他の役についても、原作にない台詞が数多く挿入されていて、それらが原作の台詞と比べて軽々しく感じられたのがちょっと残念。

二重唱、三重唱で異なる歌詞を同時に歌うのはオペラではよくあることで、西洋の言語であれば美しく響き合うのだけれど、日本語は一音一音がハッキリしすぎているせいか、音がぶつかり合っているような印象で、無理に二重唱、三重唱にしないほうがいいと思った。そもそも日本語の音がオペラに適していないのかもしれない。

もうひとつ残念だったのは、右隣りの席の外国人男性がメモ帳を広げていたので、いやな予感がしていたのだけれど、案の定、上演中に暗い客席でスマホのライトでメモを取り続けていた。スマホを下向きにしてかざしていても漏れるライトが目に入り、頻繁に付けたり消したりしているのが非常に鬱陶しかった。大迷惑。

終演後、OTTAVAのオペラツアーでお世話になった広報の方がいらしたので挨拶したら感想をきかれたので、ひとしきりあれやこれやお伝えしたあと、隣りの男性のことも話したら、おそらくプレスの人だろうと。言ってれたら別の席を用意したのに、と言ってくれたけど、むしろプレスの人に移動してほしかったわ。

とまぁ、いろいろありはしたものの、観に行ってよかった。林田さんのおかげ (^^)