9時すぎに起きていたのに、なんやかやとバタバタしていて、もう15時近くなって出かける支度を終えたところで、ハッと気がついた。今日は8日。3月歌舞伎座の優先予約の日なのにすっかり忘れていた。毎月のことなのに、時々やらかしちゃうのよねぇ。
予約をしてからコメダ珈琲へ。「英雄の書」を読み進め、17時すぎに駅へ。初台へ向かう。
前回、西日暮里→新宿経由のルートから、大手町→神保町経由のルートに変えたんだけど、今回はさらに新御茶ノ水/小川町経由のルートに変えてみた。これだと新御茶ノ水から小川町へは徒歩ですぐなので、1回の乗り換えで済む。小川町経由の乗り換えはすごく歩くような印象があったんだけど、実際に歩いてみたらそうでもなかった。このルートが一番楽みたい。
新国立劇場の中劇場で、シス・カンパニー公演「近松心中物語」。歌舞伎でもおなじみの梅川忠兵衛を宮沢りえの梅川と堤真一の忠兵衛。これに小池栄子のお亀と池田成志の与兵衛というもう一組のカップルが加わる。不勉強にして知らなかったんだけど、近松作の「ひぢりめん卯月の紅葉」「跡追心中卯月のいろあげ」の2作品に出てくるのがお亀与兵衛。与兵衛にぞっこんのお亀を演じる小池栄子がとてもキュートだった。
歌舞伎では梅川と忠兵衛が最初から相思相愛で、八右衛門は敵役に近く、忠兵衛は八右衛門に対する意地ずくで、預り金300両の封を切ってしまい、「一緒に死んでくれ」と梅川を連れて老父が住む新口村へ向かう。これに対し、今作は梅川と忠兵衛が初めて出会う場面から描かれていて、八右衛門は父親の旦那筋にあたる大名から梅川の身請けを手助けするよう頼まれて断るわけにいかないという設定になっていて、忠兵衛は、自分は梅川を見受けする金を工面できないことをよく承知していて、それでも他の男に見受けされたら生きてはいられないという梅川の命を助け、自由にしてやるために、ひとり罪に落ちる覚悟で金封を切る。ここが大きく違うところで、逃避行の身となってからも、忠兵衛は梅川を助けたい一身で、新口村ではなく梅川の故郷に向かうが、すでに家族は絶えており、梅川を預かってくれる者はいない。梅川も忠兵衛の身を案じ、自分が一緒では足手まといになるから、自分はどこの苦界に落ちても構わないから逃げてくれと懇願する。ハナから「一緒に死んでくれ」と言ってしまう歌舞伎の忠兵衛とは違うのよねぇ。切ないまでの想い。
また、忠兵衛の養母が役人に引き立てられていく場面もあり、単なる若気の至りでは済まない「事件」だったんだなぁ、と初めて思い至った。歌舞伎では描かれてない場面だから、これまで気付かずにいた。自分の罪が養家にも及ぶことを忠兵衛は考えただろうか。
八右衛門は市川猿弥、梅川を抱えるお茶屋の主人を「科捜研の女」でおなじみの小野武彦さん、お亀の母を銀粉蝶さん。群衆シーンは音楽が大きすぎるのか、台詞があまり通らなかった。たくさんの赤い風車を使った舞台装置はとても良かった。
21時ちょっとすぎに終演。今まで、自宅の最寄り駅からのバスは平日21時50分と最終が早く、この時間を過ぎたらもうあきらめていたんだけど、ふとしたことから、隣りの駅から私が降りるバス停までの逆方向のバスが22時過ぎてもあることが分かり、今日はその最終よりひとつ前のバスに初めて乗ってみた。どうして今まで知らずにいたのかなぁ。今日はお試しだったけど、雨や雪の日に遅くなった時などに活用しようっと。