まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

maru992016-03-11

あの日から今日で丸5年。朝からNHKで震災関連の番組を見ていたのだけれど、地震が起きた時間に黙祷できる状況にないので、家を出る前に、姿勢を正して黙祷。

初台にある新国立劇場へ。オペラシティのコンサートホールには来たことがあるけれど、お隣りの新国立劇場は初めて。昨年12月の藤原歌劇団「仮面舞踏会」に続き、OTTAVAの企画で「イェヌーファ」を鑑賞。

林田さんの呼びかけに応じて集まったリスナーは10人。希望の席種のチケットが5%引きになり、読み応えのあるパンフレットのプレゼント付き。専用受付が設置され、案内された小さな部屋には演台が置かれ、学校の教室のように椅子が並べられていたのだけれど、「これじゃ緊張しちゃうから」と林田さんは言い、演台は使わずに椅子をぐるりと輪に置いて、作品の見どころ・聴きどころや今日の流れの解説。10人のうち、私を含め4人が林田さんとゲレンさんの「音楽ゆんたく」にも通っているメンバーで、もう1人は12月の「仮面舞踏会」でもご一緒した方。もちろん初めてお会いする方もいらして、こういう形でいろんなリスナーさんと徐々に顔なじみになっていくのも楽しい。

午後2時開演。生のオペラは、オーチャードホール東京芸術劇場でそれぞれ1回ずつ、どちらも「フィガロの結婚」(後者は野田版)を観たことがあるだけで、本格的なオペラハウスの形状をした劇場で観るのは今日が初めて。幕が開くと、本来は天井の高い舞台を直方体の真っ白な箱で区切るようにして、部屋に見立てたその箱の中だけで物語が展開していく。机がひとつ置かれているだけのシンプルな装置で、客席から見て奥の壁にあたる背景の部分が場面に合わせて水平に移動し、ドアや窓が現れたり、麦畑や雪景色に変わったり。シンプルだからこそ、窓から日が差し込むだけでとても印象的。

通常のオペラは、まず幕が開く前に序曲の演奏があり、そのまま歌につながっていくのだけれど、今回は無音のままで幕が開き、主人公の女性イェヌーファの継母が登場してからもなお無音、無言のまま。それが緊張感を生み出し、林田さんが「とても演劇的」と言っていたのがよく分かる。その後も、演奏も歌も一瞬で途絶え、無音の状態が訪れる場面が何度かあり、その都度、様々な効果を生み出していた。

どちらかというとストーリーは他愛もなく、音楽と歌がメインというのがこれまで観てきたオペラの形なのだけれど、この作品はそうではなくて、有名なアリアがあるわけでもなく、ヤナーチェクの音楽もメロディ重視ではなく、会話の中での言葉の音の高低に合わせるように(台詞を補助するように)流れていく。「ニクソン・イン・チャイナ」などのジョン・アダムスによるいわゆるミニマルミュージックはまた異なり、同じ歌詞の繰り返しで意味が増幅されていくのがとても効果的。いろいろな意味で新しく、刺激的な作品だった。

最初の休憩でロビーに集まり、林田さんの番組にもゲストでいらして作品の解説をしてくださった劇場の音楽ヘッドコーチ石坂さんからお話を伺う機会もあり、終演後には劇場のレストラン「マエストロ」でディナー。ロビーに特設コーナーができていたボヘミアワインを林田さんが3本選んでくれて、その試飲会もかねたディナーはとても楽しかった。劇場の方から「そろそろ閉店なので…」と言われておひらきになるまで、たっぷり約3時間。

21時すぎに帰宅し、録画しておいた震災関連の番組を見ながら今日という日への思いを新たにし、23時すぎから英訳の続き。午前4時近くにキリのいいところにたどり着いたので、今日はここまで。