まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

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maru992008-08-27

歌舞伎座千秋楽。第2部は2時15分からと中途半端で、午前中はこれといって何もできないままに過ぎてしまった。まだ手をつけていない新しい案件だけじゃなく、翻訳の勉強をしたいという台湾の女性の手助けをすることになり、その2回目の課題に対してすでに訳文が届いているから、なんとか時間を作ってレビューしないと。


第2部の1つめは、歌舞伎としての上演は初めての川口松太郎作 『つばくろは帰る』。別れ別れになっていた母子が紆余曲折を経て再会するまでを描き、もう泣かせようとしているのがよ〜く分かっていながら、すっぽりと術中にはまって涙してしまうという…。明治座での上演時に二代目松緑が演じた役を三津五郎、淡路千景が演じた母親役を福助、現清元延寿太夫が子役時代に演じた息子の役は、亡き坂東吉弥三津五郎に託した小吉君が演じる。波野久里子が演じた娘役は七之助。淡路千景と福助ではイメージがまったく違うけど、祇園でしか生きられない女の艶やかさと切なさ、哀しさをやりすぎずに好演。お茶屋の女将は扇雀で、これがまた良かった。このところ福助扇雀に対しては辛口になりがちだっただけに、嬉しい驚きでもあった。大工の弟子を勘太郎と巳之助が爽やかに演じる。意外だったのが巳之助で、この人にこんな三枚目ができるとは思っていなかった。ひと皮向けた感じ。


2つめの 『大江山酒呑童子』 は、勘三郎が先代とはまったく別の演じ方に挑戦するという意欲作。でも先代のを観ていないから比較できないし、土蜘蛛のバリエーションみたいだった。幕切れに所作舞台が屋台返しのようにググ〜ンと斜めに上がったのにはビックリ。串田さんのアイデア。この場面で上から真っ赤な粒状のものがジャラジャラと降ってきて、みるみるうちに山積になるぐらいだったんだけど、この物体がなんなのか、何を表しているのかが分からなかった。


続いて第3部。おなじみの 『紅葉狩』 は、2部から続けて見ると、酒呑童子と後シテがかぶっちゃうのね。勘太郎の鬼女も橋之助の維茂も巳之助の山神もみんな初役で、すご〜く一生懸命なのが伝わってきて気持ちがよかった。勘太郎は今月5役すべてが初役だって。稽古期間が短いのにすごいなぁ。若さだねぇ。


最後は今月の目玉ともいうべき野田版 『愛陀姫』。オペラのアイーダを歌舞伎に翻案したもので、『研辰の討たれ』 と 『鼠小僧』 に続く野田版の3作目。それまでの2作品は全体の雰囲気や印象が似通っていたのに対し、今回はまったく新しいタイプで、今までの中で一番いいと思った。正直、前の2作品は一度観れば十分だったんだけど、今月はもっと早くに観て、もう一度観たかったなぁ。そのぐらいよかった。野田さんらしいスピード感はそのまま。でも騒々しさや慌しさを感じない。蛇腹式の道具もシンプルかつ効果的。これもシネマ歌舞伎になるのかなぁ? 他のはもういいけど、これはなったら行くかも。客席に秋元康さんと紺野美佐子さんを発見。探せばもっと有名人がいたんじゃないかな。


大満足で歌舞伎座を後にし、帰宅後、朝5時すぎまで仕事に励む。遊んだ分だけ働かないと〜!