8時起き。のつもりで実際に起きたのは8時半すぎ。その分ずれ込んで、9時に始める予定の着付けを9時半すぎに始める。半襟は夕べのうちに縫い付けておいたから、準備万端。…のはずが、衣紋抜きがついてな〜い! あわてて別の長襦袢から衣紋抜きをはずして縫い付ける。焦るものだからうまくいかない。いかんいかん、着付けに焦りは禁物。落ち着いて落ち着いて。
最近ようやく慣れたのか着物自体はそれほど時間がかからずに着られる。問題は帯だ。今日は久々に半幅帯で、藍染と紅花染のリバーシブルなので、両方の色をいかせる重ね角出しという結び方に挑戦することにした。もちろん初めて。夕べベッドの中で本を見ながら、頭の中で何度も立体シミュレーションをして、一応なるほど〜、と手順を理解したつもり。でも帯というやつは、最初にどの位置で巻き始めるかによって形が決まらなくなったりするから、さすがに一度でドンピシャとはいかない。でもシンプルな結び方なので、それほどの苦労はなく、それらしい形になった。ここで終わらないのが半幅帯のお楽しみ。前帯を斜めに折り上げてポケット状にしたところへ、歌舞伎柄のハンカチを半分に折ってはさみ込む。赤い色があるといいな。何かなかったかな。印籠かぁ…。まぁいっか。前がにぎやかになると後ろがさびしい。そこで、後ろ中心の帯の結び目に古布の3連アクセサリーを斜めにかけてみる。ちょっとやりすぎ? でも今日はイベントだからいいか。
初めての半幅帯だから不安があって、ちゃんと結べているのかどうかチェックしてもらうために着物のお店による。「わぁ〜っ! すごい! これどうやって結んだの?!」 と逆にきかれてビックリ。変じゃない?「ぜ〜んぜん。直すところなんてないよ」 本当? うれしい〜。100点満点? 「うん。あ、でも気持ち … ちょっとおはしょりが狭いかなぁ」 ありゃ。帯はそのままで、あっちを引っ張り、こっちを引っ張り、直してもらったのでマイナス10点。やりすぎじゃない? 「そんなことないよ。こんなの始めて見た。勉強になるわ」 そこまで言ってもらえるとは。でも本当は、今日のイベントのゲストである鴈治郎丈に敬意を表して成駒屋にちなんだ柄にできるとよかったんだけど。
気を良くして慶応に向かう。これまで慶応歌舞伎研究会OB会のイベントは20数人規模だったのだけれど、今回は鴈治郎丈を迎えて、240名も入る大きなホールを借り、新聞でも広告を出した甲斐あって、140名近い盛況だった。私は通信過程だったから歌舞研には所属していなかったんだけど、たまたま縁あって去年までOB会のお手伝いをしていた。でも理事会組織の再編でお役ごめんになったから、今日は単なるお客様のつもりで行ったのだけれど、現役員の方々に紹介され今までの労をねぎらわれ、ひどく恐縮してしまった。ずっと名簿の管理をしていたから役員の名前は全部知っているのだけれど顔が分からない。それが今日やっと結びついた。
ミーハーな私は最前列に陣取る。今日の聞き手はOB会のメンバーでもある渡辺保先生。鴈治郎丈は意外にもスーツ姿で登場。まぁダンディ。この種のトークショーは聞き手によってカラーが全然違ってしまう。あたりさわりのない話で終始するような人だとガッカリしちゃう。でもそこは保先生。いろんな芝居のあれやこれ、突っ込んだ話がたくさん聴けて、とっても興味深い2時間だった。私の中で鴈治郎丈という人は今までビミョーな位置にいたのだけれど、やっぱりすごい人なんだなぁ、と素直に実感してしまった。
終了後、北千住にできた劇場の上のギャラリーでやってる浮世絵展を見て、それから南千住のユザワヤによって、夜はマジメに仕事しよう、と考えながら帰り支度をしていると、「さ、行きましょう」 と役員の方に声をかけられた。なんと打ち上げのお誘い。でも私、もう理事でもなんでもないんですけど…。「いいのよ、いいのよ、さぁ」 と連れて行かれた先は、慶応義塾生御用達の居酒屋で、店内は三色旗をあしらった卒業記念のプレートでいっぱい。すご〜い。OB会の中では私が最年少なのだが、現役の歌舞研メンバーと話しをしながら、この子達の母親でもおかしくないんだよなぁ、と思ったら不思議な気がした。現役メンバーのひとりはこれから歌舞伎座の大道具でアルバイトだと言って出かけていった。今月の舞台を観ながら、裏で彼が働いていると思うといっそう楽しめそうだな。
現役の女の子をまじえてオジサマたちと話をしている間に、以前、私が某会報で連載していた歌舞伎史の連載の話題が出たら、その途端、彼女が目を丸くした。「ひょっとして、あのHPで公開されてるあれですか?!」 え? 知ってるの? 「歌舞伎の部屋」 で公開している今昔芝居暦。「知ってるどころか、とってもお世話になったんです!」 と彼女が言うので面食らった。なんと彼女は、卒論の材料のひとつに東宝歌舞伎をとりあげ、ネットで資料を調べているうちに私のHPにたどり着いたそうで、彼女の卒論には私のHPからの引用が参考資料として掲載されているそうな。ひょ〜っ。「あのページを見つけられなかったら卒論書けなかったかもしれません」 とまで言ってくれて、思わぬところで自分の書いたものが役に立っていたことに驚き、また感激してしまった。「先輩」 なんて呼ばれてくすぐった〜い。
OB会のメンバーの中には大学教授の先生もいて、この先生、私に 「俺の秘書にならない?」 と光栄なお誘いをしてくれたのだけれど、お酒が覚める頃にはきっと私のことなんか覚えてないだろうな。
思いがけない展開で帰宅は10時近く。明日は油絵の自習日なので、生クリームを買って帰り、栗のロールケーキを焼く。実際に焼いてる時間は15分ぐらいなんだけどね。初めてロールケーキに挑戦したときにはうまく巻けなくてスポンジに亀裂が入っちゃったんだけど、今日はうまくいって、見かけは上出来。るん♪