朝から歌舞伎座へ。毎年8月は若手中心の納涼歌舞伎。といっても最近はもう他の月も若手中心になりつつある。歌舞伎の世界では四十代でも「若手」だからね。今月の座組では幸四郎がすでに五十路に入っているけども、自分より年下はみな「若手」と思ってしまいがち。2年前の納涼歌舞伎では幸四郎と猿之助が弥次喜多を演じていたのになぁ、とつい考えてしまったりもする。
第一部の最初は「ゆうれい貸屋」。幽霊役の児太郎がはじけまくり、勘三郎との舞台で大いにはじけていた児太郎の父、福助の姿に重なる。声は児太郎のほうが低いのかな。その声がドスをきかせる場面でとても効果的。巳之助との相性もよく、楽しい一幕。
続く「鵜の殿様」は山川静夫さんの原作による舞踊劇。幸四郎の太郎冠者に染五郎の大名。鵜飼の真似事が振りになり、大名が太郎冠者の首に鵜縄を巻き付け、太郎冠者は逃げ回る。その動きが二人ともスピーディーでダイナミック。実際には鵜縄はないのにまるで目に見えるよう。大縄跳びのように回し、高麗蔵、笑也、宗之助の腰元3人が飛んで見せる場面もあって楽しかった。
第二部の見どころは、勘九郎初役の髪結新三。忠七を七之助。幸四郎の源七に巳之助の勝奴、鶴松のおくま、片岡亀蔵の善八、扇雀のお常。新三をやり込める家主には、「ゆうれい貸屋」でも家主を演じる彌十郎。勘九郎の新三は、勘三郎よりさらに骨太の悪という印象。優劣ではなく、性質の違い。大詰めの源七との斬り合いのあと、二人が客席に向き直り「こののち所作事」と次の幕の案内で終わる。
その所作事が「艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか)」と絶対読めない題で、通称「紅翫」。橋之助が演じる紅翫をはじめ総勢9人の若手が次々に踊りを披露するもので、最近わりと多いパターン。
そしていよいよ第三部。京極夏彦さん書き下ろしの「狐花 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)」。人気シリーズの主人公、中禅寺秋彦の曽祖父の時代を描き、その曽祖父を幸四郎が演じる。このシリーズを私は読んでいなくて、新作の内容を予習することもなく、観る前に1枚だけ買った舞台写真が一番シンボリックな狐面の七之助。真っ赤な彼岸花とその様々な呼び名が印象に残る作品。原作本も刊行されているようなので、読んでみたい。
それにしても、第一部では太郎冠者で舞台の上を所狭しと動き回り、第二部では源七で睨みを効かせ、第三部でも謎解きの重要な役割を勤める幸四郎。タフだわ~!
終演が21時15分過ぎと遅かったので、帰宅は22時半すぎ。今日はもう余韻にひたりつつ早寝しちゃおう。