まるぶろぐ

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国立劇場

国立劇場に向かう前にベックスで腹ごしらえ、のつもりがまだモーニングの時間で、ベックスのモーニングはイマイチなので、モスバーガーでグリーンバーガーとアイスコーヒー。

千代田線と半蔵門線を乗り継いで国立劇場へ。思いがけず列ができていたのは小劇場で、踊りの会があるらしい。大劇場は十月大歌舞伎。チケットを取るのが遅れ、正面のブロックではなく右寄りの席。第1部は「ひらかな盛衰記」より「源太勘当」で始まる。源太といえば梅玉さん。私の中では他の配役が浮かばないぐらい。その源太を陥れようとする弟の平次を幸四郎。悪たれ坊主のような幼児性も必要な難役が意外にハマっていた。梅玉実弟である魁春が母の延寿を演じる。以前は源太の恋人千鳥だったのに…。その千鳥を扇雀武家物では武将の妻は大抵、夫の言葉に背くことなく従順なのに、延寿は源太の切腹を命じる夫の手紙を読み、私の子でもあるのに勝手なことを、と憤り、源太を生き延びさせるために勘当する。そこが肝。

次の幕は時代物から一転し、「幸希芝居遊」と書いて「さちねがう しばいごっこ」と読ませる。以下ネタバレになるけども、舞台上の芝居小屋には「興行停止」の札。もう半年もの間、芝居は上演されていない。花道から着流しで出てくる幸四郎は役者のひとりで、「芝居がしたい ああ、芝居がしたい!」とごちている。芝居がしたい一心で小屋に忍び込むと、そこには同じ思いの役者仲間たち。幟(のぼり)や楽屋暖簾(のれん)を衣装代わりに、雑然と置かれている棒やら何やらを小道具にして、芝居ごっこが始まる。次から次へと、様々な演目の見せ場をつなぎ、スピーディーに見せていく。ところが、実は夢落ちで、初日の舞台を前に居眠りしていたという趣向。夢の出来事なので、興行停止の理由も流行り病ではなく、殿様でさえ3つしか食べない秋ナスを役者ふぜいが10個も食べたから、と身も蓋もない。こんなことは夢だけで、いつまでも芝居ができる幸せな世の中でありますように、と幸四郎が演じる役者は言い、暗転を経て、桜が満開の仲の町を背景に、華やかな踊りで幕が閉まる。まさに今の状況を反映させた新作で、幕間に読んでいたパンフレットに掲載されていた出演役者の言葉にも舞台への想いが溢れていたことを思い、胸が熱くなった。

役者仲間には、宗之助、廣太郎、莟玉に、まだ10歳の松本幸一郎くん。可愛かったー。廣太郎は太ったかな? と思っていたら、幸四郎に「太ったんじゃない?」としっかり突っ込まれていた。

一部が終わり、近くの甘味処「おかめ」で甘辛弁当。「おにぎりにかけてどうぞ」と言われた煎りゴマの量が多く、おにぎりだけでは使い切れないので、黒いすりゴマがこぼれるほどかかっているおはぎにも煎りゴマをのせてみた。作りたてでホカホカのおはぎの美味しさが一層アップ。

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まだ時間の余裕があったので、国立劇場に併設されている伝統芸能情報館で企画展示「国立劇場の養成事業 - 心と技を伝えた50年」を見る。研修風景の写真の中に又五郎先生や尾上松助さんのお姿もあり、懐かしい。さらにそのあと国立演芸場の演芸資料展示室で、榎本健一没後50年記念の「エノケン」展。エノケンさんは、リアルタイムではもちろん観たことがないんだけど、「虎の尾を踏む男達」という映画で大好きになり、その映画を何度も観た。いい展示だったなぁ。18時閉館で、国立劇場第2部の終演後では間に合わなかったから、幕間に見ることができてよかった。

第2部の最初は「魚屋宗五郎」。菊五郎の宗五郎はもう名人芸の域。しびれる。時蔵の女房おはま、團蔵の太兵衛、権十郎の三吉に梅枝のおなぎと周囲も手堅く、菊五郎の孫丑之助の丁稚も可愛らしい。彦三郎の殿様、片岡亀蔵の伝蔵に、ご家老様は左團次さん ♫ 

お久しぶりですー、と左團次さんの番頭さんともゆっくりお話できて、良かった。

最後の「太刀盗人」は、松緑のすっぱ(スリ)に坂東亀蔵の萬兵衛、片岡亀蔵目代。こういう軽めの喜劇で1日の演目を締めくくるのは後味が良くていいなぁ。

引き続き客席は最前列をすべて使わず、2列目以降も1席おきで、1階はそれなりにうまっていても、2階はガラガラ。それでも、歌舞伎座の4部制に比べ、1部と2部を通して観た満足感は大きい。国立劇場はチケットも比較的安いから、ぜひもっと多くの人に観てほしいなぁ。