まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

誘惑に勝てない

昨日かなり仕事を頑張ったので、今日はちょっと余裕が…というか、視聴期限のあるオペラをあきらめずに観ちゃっても納期にはなんとか間に合うはず、と自分に言い訳をして、無理やり余裕があることにしよう、というかなり苦しい状況だったりするけども。

なぜあきらめられないかといえば、まずウィーン国立歌劇場の配信では2回めとなる「ドン・カルロ」がフェルッチョ・フルラネットとプラシド・ドミンゴの共演。これは絶対に見逃せない!

2017年6月の舞台で、去年9月のライブ配信と同様にダニエル・アバドの演出。前回のルネ・パーペの国王も素晴らしかったんだけど、フルラネットとは15歳の年齢差があり、特に若い妻が自分を愛していないと嘆く場面で、「彼女が嫁いで来た日、自分の白髪頭を目にしたときの悲しげな顔が忘れられない」と切々と歌うフルラネットの老いた哀しみ。いぶし銀の魅力。対してドミンゴが演じたロドリーゴは、国王の息子カルロが親友と呼ぶ役だから、カルロと同年代の歌手が演じることが多く、前回はファビオ・サルトーリのカルロに対してサイモン・キーンリーサイド。それが今回はラモン・ヴァルガスのカルロにドミンゴロドリーゴで、年齢だけを見れば親子ほど違うんだけど、カルロを心配し、守ろうとする役だから違和感がない。歌舞伎で言えば若い殿様を守護する家老職、みたいな。エリザベッタはクラッシミラ・ストヤノヴァ、エポリ公女は前回も今回もエカテリーナ・ツィトコーワ。もう完璧なはまり役。

どの作品でもキャストの歌唱は素晴らしいのだけれど、今回はなんかもう声の「圧」が違う。まさに圧巻。

ちょこっと買い物に出て、上島珈琲店で和訳の見直しを少しだけ進めて帰宅。もう1本、視聴期限が明日の23時までのオペラがあって、明日は絵の教室だからおそらく今日しかチャンスがない。そういうときに限って一度も観たことがない作品で、しかも「ドン・カルロ」に続きフェルッチョ・フルラネットが出演している。ああもう、観ちゃうから!

というわけで、ムソルグスキーの「ホヴァンシチーナ」という作品。2014年11月の公演で、セミョーン・ビチュコフ指揮、レフ・ドディン演出。画面上では字幕を英語とドイツ語の二択で選べるように表示されるのに、どちらを選んでも字幕が一切表示されず、ネットで調べたあらすじだけが頼り。ロシアの史実に基づいていて、為政者の後継者争いと宗教をめぐる対立を描いていて複雑だし歌詞もほとんど分からないんだけど、全体を通して合唱が多く、合唱大好きだから、その力強い響きが耳にごちそう。

3幕の終盤、ホヴァンスキー公を演じるフルラネットに異変が。声がかすれ、苦しそう。そのあとの幕間に劇場側から説明があったけど、ドイツ語だからフルラネットの名前が出たことしか分からず詳細は不明。ホヴァンスキー公は4幕の初めのほうで殺されてしまうので、苦しげな様子がかえってリアリティにつながっていたというのもまたすごい。

最後の最後、宗教対立に敗れた一派が集団自決を選び、全員が下着姿になって修道院に入っていき、背景に真っ赤な炎が揺らめく中、修道院に見立てた装置が徐々に沈んでいく。この装置、金属の棒だけで組まれた巨大な構築物で、テンペストでも似たような装置が使われていた。スケールが大きく、場面によって異なる建物を表しているので想像力がかき立てられ、照明も映えて視覚的にも効果的。

クリストファー・ヴェントリス、エレーナ・マクシモワ、アイン・アンガー、ヘルベルト・リッパート、ノルベルト・エルンスト他の出演。

ああ、明日も絵の教室だから仕事はできないのにー。ただ、観ながら手は動かしていて、ニャンドゥティはますますカラフルに進行中。

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