作品展前日の夜に東劇でメトロポリタン・オペラのライブビューイング「アクナーテン」。上映期間が作品展の会期中に終了してしまうものだから。
紀元前14世紀の古代エジプト第18王朝ファラオのアメンホテプ4世(別名アクナーテン)を主人公とする作品で、フィリップ・グラスのオペラがMETで上演されるのは「サティアグラハ」に続いて2作目。
ミニマル・ミュージックと呼ばれることをグラス本人は歓迎していないそうだけれど、その延々と繰り返されるパッセージの連続性がもたらす独特な効果が最大限に発揮されている作品。アメンホテプ3世を演じるザッカリー・ジェイムズの台詞と各場面の見出し的な字幕で状況説明がなされ、古代エジプト語やヘブライ語を含む歌詞は最小限かつ儀式的なもので、歌声というよりは単音の発声が重唱となり力強く響き合い、音楽との相乗効果でときに緊張感を高め、ときには永遠を思わせるカタルシスに導いてくれる。通常のオペラとはまったく異なる異次元的感覚。
タイトルロールを演じるカウンターテナーのアンソニー・ロス・コンスタンツォは、以前、海老蔵の源氏物語にも出演していて、客席後方から舞台まで歩く間にすぐ近くを通っていった、あの彼がメトロポリタン歌劇場で主役を勤めている。感無量。ライブビューイングのホスト役であるジョイス・ディドナートとの仲の良さが伝わってくる楽しいインタビューに加え、カーテンコールでたくさんの人とハグしたあと、絢爛豪華で重そうな衣装を脱がせてもらい、上半身ほぼ裸になった途端、I’m free!と叫んで駆け出していく、その飾り気のない素顔がとてもチャーミング。
2回、3回と繰り返して観たい神秘的な舞台。残念ながら上映期間中にまた観に行くことができないので、何年先になるか分からないけど、BSプレミアムシアターかWOWOWでの放送を楽しみにしよう。
18時半から22時すぎまでの上映だったので、帰宅したのは23時すぎ。いよいよ明日から絵の教室の作品展。必要な荷物はすべてそろえ、忘れ物はない…はず。