まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

maru992015-06-17

久しぶりに渋谷のシアターコクーンへ。1月の「PLUTO」以来。

午後1時開演の「ABKAI」は海老蔵の自主公演で、第3回の今年は第1回に続き日本の昔話を題材とし、前半は浦島太郎の乙姫を、後半は桃太郎の赤鬼を海老蔵が演じる。第1回の花咲か爺さんは、基本的によく知られているとおりの物語だったのだけれど、今回はどちらもだいぶひねりが加わっている。まず乙姫は龍神の子孫で、男たちの心臓を命の糧にしていて(要は殺して食べてしまう)、そうしないと龍宮城の繁栄を維持することができず、そのために亀たちが人間の男たちを海底に連れてくる。鬼ヶ島の鬼たちは、争いを好まず平穏に暮らしているのに、桃太郎を大将とする人間たちが一方的に攻めてきて殺されてしまう。どちらもシニカルで、オリジナルの物語より面白い。

羽織袴に素顔で狂言回しを務める福太郎くんが可愛らしく、姿勢がよく立ち居振る舞いも美しい。海老蔵の「オトちゃん」こと乙姫は、おどろおどろしい設定が悲しい性(さが)に思えてくるほど憂いに満ちて美しく、つい最近も記者会見でのなげやりな態度が批判されていた素顔との落差を思うと、役者なんだなぁ、と変な感心をしてしまう。市川右近が演じる浦島太郎にも、貧困に喘ぎ病弱な老母の介護に疲れ果てているというサイドストーリーが用意されていて、乙姫が彼を殺す気になれず、すでに母も亡くなっている現世に戻され、玉手箱を開けるが空っぽで、絶望に打ちひしがれる。切ない余韻を残して幕。

休憩をはさんでの後半は、一転して笑える場面が多くスピーディーな展開。右近の青鬼、市蔵の緑鬼、九團次の黒鬼、弘太郎の黄鬼がそれぞれに生き生きして全体のテンションが高いのに、海老蔵の赤鬼が登場すると吹き飛んでしまう。なんやかや言ってもやっぱりカリスマ性があるのよねぇ。前方中央の通路で、両脇の客席の肘掛けの上に立ち、金棒を振りかざして周囲を睥睨する赤鬼の爆発的なパワーと眼力。目千両とはよく言ったものだなぁ、とここでもまた感心してしまった。

終演後の客席で「フツーの歌舞伎より面白いよね」「ていうか歌舞伎なの?」という会話が聞こえて、たしかに日本の昔話にアレンジを加えた現代演劇もあるし、それらと今回の公演との違いは? とか、そもそも歌舞伎の定義って? とか考え始めると深みにはまって戻って来られなくなりそうだから、やめた ^^;

劇場を出て、フレッシュネスバーガーへ。1月にはリニューアル中だったから、リベンジ。アボカドバーガーとポテトのセット。アボカドがペースト状になってるサブウェイのアボカドベジーと違い、厚切りのアボカドが圧倒的な存在感で、玉ねぎが炒めてあるのもいい。美味しかった♪

夜にはゲレンさんの Salone を聴きながら手織を進め、そのあと録画で「Dr.倫太郎」の最終回。明良が母親からの呪縛を克服し、決別を告げる場面がとても良かった。静かな大団円。