国立劇場は正午開演。余裕を持って家を出る。チケット発売に出遅れたので、4列目のほぼ中央。演目は、ずいぶん久しぶりな気がする「国性爺合戦」。
松竹の興業とは違い、古い脚本を発掘したり上演の絶えていた場面を復活したりと意義のある企画を見せてくれるのが国立劇場の大きな魅力。今回も、通常は「平戸海岸」から「甘輝館」までのところ、その前に李蹈天が謀叛を起こして皇帝を殺してしまう「大明御殿」が上演されることで、スケールの大きなこの作品の背景がよく分かる。
「平戸海岸」だけが日本であとは中国が舞台なので、衣装も唐衣。それぞれに凝った作りで面白い。難を逃れて平戸に流れ着いた皇女が漁師の和籐内と出会い、初めのひとことだけは異国の言葉を思わせるチンプンカンプンな一節なのだけれど、和籐内の父親はもとは明の忠臣という説明が義太夫で入り、あとはスラスラと日本語で会話が進んでしまう。実際には和籐内が中国語をマスターしていて中国語で会話したという設定なのかしらん? と深く考えてはいけないのがお芝居。実際、中国が舞台なのに義太夫でもほとんど違和感はないのだから。(忠臣呉三桂が皇帝を諌めようとして「あなた様はなぁ」と言った時には、一気に舞台が日本に戻ったようでさすがに違和感があったけども。)
和籐内は團十郎。船の上で仁王立ちになり水平線を見つめる場面は「毛剃り」にそっくり。虎退治の虎はずいぶんとかわいらしい着ぐるみで、以前、猿之助が京劇を使った舞台を懐かしく思い出した。
続く「楼門の場」は、ほとんど動きがなく台詞だけで進んでいくのが物足りなく、最後の「甘輝館」でも、多少は動きがあるものの、物足りなさが解消されるには至らなかった。やっぱり物語の展開としては大詰めに向かって盛り上がってほしいのに、李蹈天を倒すべく挙兵の同盟を組むところまでで終わってしまうから、ちょっと尻すぼみ。幕切れには和籐内も唐衣を着るんだけど、隈取のままなので異様だった。和籐内の父親、老一官は左團次さん♪
4時前の終演後、お堀端の紅葉を楽しみながら、久しぶりに甘味処「おかめ」へ。いつもどおり豆かんを頼むつもりだったのに、つい隣りのテーブルに目がいってソフトクリームたっぷりの白玉ぜんざいにしてしまった。しかもカロリー過多を承知の上で、あんことごまのおはぎを持ち帰り。だってここのおはぎ、熱々の作りたてで美味しいんだもん。
帰りの車内でクライアントからのメールを受信。夕べ英訳を送った案件でもとの和文に修正が入った。帰宅後、コンブリオを聴きながらすぐに対応。
コンブリオのあと「ER」。マイケル・クライトン氏への追悼コメントで始まり、グリーン先生はじめ懐かしい顔が次々に登場。ああ、本当に終わってしまうんだなぁ、と寂しさが募る。普通に日本語で見たあと、英語でもう一度。この最終シーズン、どの回もすごくて涙腺がゆるみっぱなし。