まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

ソーイング

卯月の始まり。めずらしく朝からキッチンに立つ。人気のレシピブログが本になったのに、発売日を過ぎてもいっこうに近所の書店に並ぶ気配がなく、アマゾンで注文したのがようやく届いた。ユニークなレシピがたくさんある中で、真っ先に作ってみたくなったのが豆腐のパン。木綿豆腐と小麦粉だけでパンになるなんて信じられる? 水切りの必要もなく、ボウルの中で混ぜてまとめてオーブンで焼くだけ。ベーキングパウダーを加えたものの、本当にふくらんでパンらしくなるのか、半信半疑で焼き上がりを待つ。もちろん発酵の手間はいらない。材料の準備は5分もあれば十分だし、焼き時間も15分。ワクワク。アツアツの焼き上がりを半分に切ってみる。おおおっ! ほっこりと湯気が上がって、大豆の甘〜い香りがただよう。さっそく試食。う〜ん、不思議な美味しさだ。やさしい味。普通のパンとは別物なんだけど、立派に朝の主食になる。すご〜い!


忙しくならないうちに、と会計ソフトの年度繰越処理をして、1月からの新年度分のデータを入力。年末年始にかけて専念していた案件も、今となっては遠い昔のことみたい。これまでは会計ソフトのデフォルトデータはそのままいじらずに使っていたのだけれど、翻訳の会計はお金の流れがシンプルだから、会計項目も処理プロセスもいらないものがたくさんあるので、だいぶ慣れてきたからカスタマイズしてみた。これでかなり使い勝手がよくなるはず。なんかこう、せっかく高機能なソフトの本来の能力をごくごく制限しているような気もしないでもないけど、ツールとして使い込んでいかないとね。


一段落したところでミシンを引っ張り出し、ソーイングタイム。手織に必要な道具をこれまで手編みの袋に入れていたのだけれど、アフガン針とか、細くて先端のとがったものが編み目のすき間から飛び出してしまうので、布地で収納袋を作ろうと前々から思っていた。先に用途ありきなので、寸法はメジャーでなく収納したい道具に合わせ、マチ針も使わず縫いしろにアイロンで折り目をつけた上からダーッと直線縫いするだけの手抜き作業。下半分を袋状にして、1本1本の道具の幅に合わせて境界線を作り、全部収納したら横からクルクルと巻いて麻糸でしばる形。留め具には手芸店で見つけた木工クラフトを使用。150円の安物だけどピッタリ。黒地に黒糸だから、縫い目が曲がってもまったく目立たないのがいいところ。1時間足らずで完成。へへっ。


さてさて、そうこうしているうちに6時を回っている。今日は1日でMOVIXの映画が千円ポッキリなので、ネットで予約しておいた。風が強くて寒そうなので、厚着をして自転車でビュ〜ン。


明日への遺言」。東京裁判を題材にした映画だけに、年齢層が圧倒的に高い。何度も涙があふれた。感動とはちょっと違う。岡田資という人の人としてのあり方が静かに迫ってきて、言葉にならない感情がこみ上げてくる。多くの軍指導者が責任を転嫁し保身を図ろうとする中で、司令官として一身に責任を引き受け、裁判の場では自身の命運よりもむしろ米国軍による無差別爆撃の違法性を問い、信念を貫こうとする。その姿に法廷が動かされ、有罪判決後、舌鋒鋭く岡田の責任を追及していた検察官までもが助命嘆願に加わるが、自らの助命を固辞して部下の減刑に力を尽くす。「私は貝になりたい」 を引き合いに出すまでもなく、拒否し得ない命令に従ったにすぎない多くの人が処断されたにもかかわらず、岡田の部下は全員、重労働の刑にとどまる。すごいのはこれが史実だということ。米国人でありながら岡田の弁護人として公平を貫いたフェザーストンについて、もっと知りたいと思った。翻訳に役立つ知識もあった。裁判手続の 「略式」 をこれまで summary としていたのだけれど、映画の中では bridge を用いていたのだ。bridge かぁ。そうかぁ。いかにも 「つなぎ」 という感じがする。なるほどねぇ。


9時半近くの終了後、スタバでパンフレットをじっくり読んだ。実際の岡田氏の写真も掲載されていて、涼しげな眼差しが印象に残る。死ぬのが怖いのは様々な煩悩があるからで、やるべきことをなし、「生を整え終るならば死の恐怖は起る余地がない」 と書き残している。重く受け止めたい言葉。


帰ってからもあれこれ考えてしまい、なんだか寝つけそうにない。