まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

最後のバリエーション

maru992008-01-25

芝居3連ちゃんの3日目。浅草に始まり国立劇場新橋演舞場を含め、盛りだくさんだった初春歌舞伎も今日の歌舞伎座夜の部で打ち止め。


昼の部と同様に最前列の席につくと、真後ろが浅草でも会ったアウロラさんだった。劇場でいろんな人に会う中でアウロラさんに会う率が一番高いのは、彼女が同じ興行を何度も観ているからなのよねぇ。「演舞場観た?」 観た観た。「何回?」 1回だけ〜。「あら珍しい」 って、いやいや、私は基本的にどの興行も1回ずつしか観ないし、何度も通う人の方がむしろ少数でしょ。今月はあちこちで歌舞伎をやってるから、ひととおり全部観るだけで大変なのに、全部を何度も観たらさぞかし大変でしょう。「そうそう。すっごく大変」 って、やっぱりいつもどおりに全部を何度も観てるのねぇ。すごすぎ〜!


最初の踊りは、若手3人が松竹梅のそれぞれをめでたく舞い納めた後、老夫婦が仲睦まじい姿を見せる 『鶴寿千歳』。最近は、私のように結婚しない人も少なくない上に離婚率も高いから、こんなふうに共白髪で最後まで添い遂げる夫婦って、割合にしたらさぞかし低いんだろうなぁ、と思いながら観た。


『連獅子』 は高麗屋父子。中村屋は3人の毛振りがピッタリとそろうのが見所で、親獅子の後を2匹の仔獅子が必死で追いかけていくような印象を受けるのに対し、高麗屋の方は、中村屋より静けさを感じるというか、端正で厳かで、親獅子は仔獅子の後ろからじっと見守っているような大きさを感じた。毛振りの場面でも、無理にそろえようとせず、染五郎は意識的にスピードを速めて、仔獅子の若々しさを出そうとしているようだった。こんなふうに較べながら楽しめるのも歌舞伎の面白さのひとつ。


最後は 『助六由縁江戸桜』。以前は市川宗家しか演じることを許されなかった助六も最近はいろんな人がやるようになったものの、この名題での上演は今でも市川宗家に限られ、たとえば菊五郎が演じる時は 『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』 となる。十寸見会御連中の河東節がつくのも市川宗家だけ。それが團十郎という名前の江戸歌舞伎の総帥としての重さ。すでに初日の中継を見ているから、より細かいところに目が行く。たとえば絢爛豪華な花魁について歩く若衆は、それぞれの花魁を演じる女形の裏紋の柄の浴衣を着ているのに、左團次さん扮する意休の子分の浴衣は左團次さんの裏紋でなく、成田屋の 「かま○ぬ」。これは多分、助六の子分は登場しないから、代わりに意休の子分を通して團十郎家への敬意を表するということなんだろうなぁ。役柄としては敵どおしなのに。


これだけの長丁場を毎日演じるなんてさぞかし大変だろうなぁ、と思いつつ、今月最後の歌舞伎に大満足。帰りの車内であれこれ考える。というのは、23日の日記に対して、好きな役者の芝居しか面白いと思えないような人がなぜ劇評を書いているのかというコメントがあったから。おそらく私が書評を書いていたのを劇評と勘違いされたのだろうと思い、すでに返信のコメントも済ませていたのだけれど、その中に書ききれなかったことをつらつらと考えていた。私自身、劇評には向かないと思っていることは返信に書いたとおり。でもそれ以上に、劇評なんかやっぱり書くもんじゃないよなぁ、というのが正直なところ。だって、劇評を書かなければいけないと思いながら観たら楽しめないもの。書評にしても、普通に読むのとは違って、ここはポイントになりそうと思った箇所をメモしたり付箋を貼ったり、気になることがあればネットで調べたりしながら読むことになる。書評ならその作業にどれだけ時間をかけても続きから読み進めばいいけれど、芝居は待ってくれない。一度だけ、「批評でなく励ますつもりで書いてくれればいいから」 と言われて劇評を引き受けた稚魚の会・歌舞伎会合同公演も、観ながらメモを取っていたし、この部分はこんな風に書けそう、と劇評の文面を考えてしまったりして、純粋に舞台を楽しむことができなかった。だから、現状では私に劇評を書く資格も能力もないしそもそも頼まれもしないのだけれど、たとえ私が批評家としてふさわしい目と筆力を持ち合わせていたとしても、書評ならともかく、劇評だけは書きたくない。あらためてそう思った。


11時近くに帰宅した後、明日は油絵の教室だからケーキを焼く。I さんがチョコレートケーキはあまりお好きでないので、普段はなるべく避けているのだけれど、明日はたまたま I さんがお休みなので、これを機会に (?) めいっぱいチョコレート風味のケーキを焼こうと、久々にチョコレートファッジを焼くことにした。粉をまったく使わず、ほとんど生チョコみたいな濃厚なケーキ。前回、塩味のキャラメルケーキを焼いた時、型に敷いたオーブンペーパーをはずさないまま完全に冷ましたらはがれなくなって大変だったことを思い出し、キレイな焼き上がりに満足しながら、すぐに紙をはがそうとしたのがまずかった。焼き上がり直後はとてもやわらかいケーキなので、型から出そうと逆さにしただけですぐに形がくずれてしまった! が〜ん、が〜ん、が〜ん。慌てて型に戻し、はみ出した部分を整え直してひとまずそのまま冷ますことにする。くすん。


その後すぐに寝ればいいのに、ようやく芝居の連ちゃんが終わって時間が自由になるものだから、手織の続きを始めたらはまってしまった。録画してあった 「プロフェッショナル 仕事の流儀 坂東玉三郎」 と 映画 「殯の森」 を観ている途中に最後まで織り終わったので、観終えるまでのつもりで糸始末を始める。最初は端糸を3本ずつ三つ編みにしたのだけれど、すべて三つ編みにし終わった時点で、なんだかあんまりきれいじゃないなぁ、と思ってしまい、ためしに何本かほどいて、端で一度結ぶだけで糸のまま残した方がきれいな気がして、せっかく編んだ三つ編みをひとつひとつすべてほどいて結び直す。その間に途中だった映画は終わったけれど、今度は糸始末が終わらない。それならば、とこれも録画してあった新国劇の映画 「暗闇の丑松」 も見てしまう。そんなこんなで、ワープツイスト織りのマフラーを完成させ、次の課題の麻糸を張り終えた時点ですでに朝の9時すぎ。な〜にやってるんだか。