まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座 第三部

第二部が「東海道中膝栗毛」の通しだったのと同様に、第三部も「新版 雪之丞変化」一本。これが今回一番驚きだった。まず、第二部は大人数が舞台狭しと走り回る賑やかな舞台だったのに、第三部には玉三郎、中車、七之助の3人と、もうひとり(音之助とやゑ六のダブルキャスト)だけ(他に中車の顔の面をかぶってパントマイムのような動きをするのが4人)。静と動で、対照的。

スクリーンでの映像を駆使し、舞台装置は最低限で、スクリーンがない場面では、なにもない、まるで舞台設営の準備も始まっていないかのように、奥に重ねて置かれている所作台や道具棚などがそのまま見える。スクリーン映像も斬新で、中車が座頭役で、仁木弾正を演じた後、舞台を降りて実際の奈落を通り、楽屋に戻るまでの映像がそのまま流れる場面もあった。そういう意味で、すごく実験的な感じ。そしてその実験は、見事に成功していたと思う。

近年では澤瀉屋が主に上演してきた演目で、雪之丞と盗賊闇太郎の二役を兼ねるパターンが多かったのだけれど、今回、玉三郎は雪之丞のみで、闇太郎、座頭の菊之丞、雪之丞が仇と狙う土部三斎のほか、狐軒老師と脇田一松斎の5役を中車が兼ねる。彼の顔が大きなスクリーンにアップになると、ちょっと引いちゃうぐらいなど迫力。七之助が演じる秋空星三郎はこれまでになかった役で、雪之丞が兄さんと慕う先輩役者。若くして、志半ばで病に倒れてしまう。実年齢とはアンバランスだけど、玉三郎七之助への期待が込められた配役なんじゃないかな。ダブルキャストなのは座員の鈴虫で、狂言回しも兼ねているので台詞も多く、こうした役にいわゆる三階さんが抜擢されるのはとてもいいことだし、今夜は音之助のほうで、とぼけたような味わいで重要な役回りを見事にこなしていた。

観る前にはなるべく情報を入れないようにしているので、帰宅後にネットで調べたら、とても効果的だった映像を担当し、脚本・演出補も兼ねていた日下部太郎というのは、立ち回り等でいつも大活躍しているベテラン、山崎咲十郎さんの本名だそうな。ビックリ! こうした形で、活躍の場が広がっていくのは素晴らしい。

Eテレかどこかで放送してくれないかなぁ。ぜひ、もう一度観たい!

購入した舞台写真から、玉三郎の雪之丞。

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