まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座 夜の部

せっかく準備万端、オメメぱっちりだったのに、隣りの女性がまぁ落ち着かないこと。バッグの中にペットボトルを入れていて、上演中も何度となく取り出しては口に運び、そうかと思えば貧乏ゆすりのように足を動かしたり。それに絶えず口の中でなにやら不可思議な音を立ててるの。シーハーみたいな。どうにも無視できずに集中をそがれる。なんともアンラッキー。

『鞘当』は染五郎の名古屋山三に松緑の不破。線が細く声の高い染五郎と骨太で低い声の松緑。今月コンビを組んでいるどの演目も好対照で、この2人、すごく相性がいいみたい。それぞれに違う魅力を引き立て合っていた。

梅玉権八が若々しい『鈴ヶ森』。吉右衛門の長兵衛が七代目幸四郎や初代吉右衛門に比べて自分などはまだまだ、と謙遜してみせる場面が新鮮に感じたのだけれど、いつもそうだっけ? 雲助たちの顔がそげたりお尻がぺろんと向けたりする滑稽な立廻りに「あらあら」と客席から声が出る。余計な私語は迷惑だけど、こういう素直なリアクションは大歓迎。

勧進帳』もしっかり起きていてちゃんと観た。当たり前といえば当たり前だけれど、今月に限っては自分をほめてあげたい。だってつまらなかったんだもの。なんだろうなぁ。何もかもが過剰すぎて気持ちがどんどん引いてしまう。重厚感とか緊迫感とか厳粛さとか、そういう大事な要素がまったく感じられなかった。

最後は『紅長』。初めて観た時は楽しくて面白くてもう爆笑しまくった記憶があるんだけどなぁ。何度目の時だったか、左團次さんの孫の男寅ちゃんが丁稚さんで出ていて、お土砂をかけられて床に寝そべった後、自力で転がって向き直って、目をキラキラさせて舞台を観ていたことを思い出す。つまらないわけじゃないんだけど、なんだかサラサラとあっという間に終わってしまった。客席は大いに受けていたから、単に私が何度も観ているせいかもしれない。

それはそれとしても、後半の「櫓のお七」はハッキリ不満だった。人形ぶりで無駄な動きが多すぎ。文楽の人形はあんなにクネクネゆらゆらカックンカックンと不自然な動きはしないのに。そう思いながら見ていたら、人形ぶりが終わっても所作の不自然さは変わらなかったので、さらにガックリきてしまった。

もちろん感想は人によって違うだろうけれど、このラインアップで、メインディッシュは後の2つのはずなのに、最初の2つの方が良かったのは残念なこと。