夕べベッドに入ってから、歌舞伎座夜の部には3時すぎに家を出ればいいから、出かける前にあれやこれやを済ませて、といろいろ考えていたらまた寝付けなくなってしまい、結局どれもこれも手付かずのまま、どうでもいいような雑事に追われるばかりでバタバタと家を出るハメに。どうしてこうなっちゃうかなぁ。
いつもは千秋楽のチケットをとるのに、今月は千秋楽が土曜日で、油絵の教室と重なるおそれがあったので1日前の金曜日にチケットをとった。「本日千秋楽」 の垂れ幕が出ていないとなんとなく寂しい。昼の部は2列めだったけど今日は最前列。黒田屋さんの下駄をはいていって、ロビーで黒田屋さんにご挨拶。
最初の幕からおめでたく、染五郎の長男斎クンの四代目松本金太郎襲名披露の一幕 『門出祝寿連獅子』。高麗屋は染五郎時代だけ市川姓を名乗るんだよね。染五郎の初代から三代目までは襲名の流れが一貫していなくて、四代目が七代目幸四郎を襲名して以来、幸四郎の前名として定着したという経緯がある。まだ4つの金太郎クン。この年頃で舞台に上がるともうそこにいるだけでかわいらしくて拍手喝采。トントンと小さな足を踏むのも、いっちょまえの見得も上手にできて、間狂言をはさんで高麗屋三代の獅子の舞。客席の目は当然ながら金太郎クンに集中して、染五郎や幸四郎の毛振りにはほとんど目が行かなかったし、金太郎クンに合わせて振る回数も少なかったから、最初に染五郎と幸四郎が振ってから金太郎クンが加わる形にした方がよかったんじゃないかなぁ。それにしても、4歳で重たい衣裳をつけて長い毛をしっかり振るんだからたいしたものよね〜。
あとの二幕は、幸四郎と吉右衛門がそれぞれに主役をはる。まず吉右衛門の 『極付番隨長兵衛』。いろんな人が長兵衛をやるけど、吉右衛門が一番しっくりくるなぁ。でもこの芝居、誰がやってもあんまり後味がよくない。町奴と旗本の対立を背景にしていて、長兵衛をだまし討ちにする水野のやり口が卑怯すぎるから。もっとも水野が長兵衛を殺害したのは史実なので、実際に姑息なだまし討ちだったのかもしれないんだけど、芝居としては、社会的地位の格差をものともせずに対等にやり合った上で長兵衛が潔く死んでいく方が絶対にカッコイイと思うんだよねぇ。
今月の最後を締めくくるのは幸四郎の 「髪結新三」。前にも染五郎が勝奴で出ていて、その時も今回も 「ちょっと二枚目だと思いやがって」 という入れ台詞があった。父親が息子をほめんでも、とつい思っちゃう。大親分の源七が歌六で、目下売り出し中の若手であるはずの新三を幸四郎というのはバランスがイマイチだけど、これは配役上いたし方ない。出色だったのは大家の弥十郎とその女房の萬次郎。特に萬次郎の上目遣いがいかにも強欲そうですごいインパクト。弥十郎はまだ若いのに、老役が多くてちょっと気の毒。
歌舞伎座の前にある建て替えまでのカウントダウンは、まもなく300を切ろうとしている。切ないなぁ。