朝イチでケータイに仕事のメールが入り、添付ファイルを確認できないので急いでPCの電源を入れたら、その途端に電話が鳴った。メールの相手から。メールを受信してからほんの2〜3分しか経ってないのに〜。先月いっぱいで事務所を離れ、アメリカで個人事務所を開いた先生の秘書さんからで、書類を確認の上その先生に連絡してほしいということだった。てことは、アメリカに移っても引き続き仕事をくれるということ? 思いもよらなかったなぁ。ありがたいけどちょっと複雑。というのはその先生とのコミュニケーションがどうもうまくかみわないものだから…。とはいえ翻訳という仕事は幸い始めてしまえばひとりの世界だから、それほど重要な問題ではないのだけれど。20数ページかぁ。とりあえず今の仕事との兼ね合いを考えて可能な範囲の納期を伝え、受注完了。その直後に別のところからも依頼がきて、ぜひとも受けたい仕事だったけど、スケジュール的にどう考えても無理だったので仕方なくお断りした。残念!
さて、まずは今の仕事を片付けないと。業界用語や技術用語が多くてなかなか進まない。特に技術用語は、どの程度までカタカナのままで定着しているかの判断が難しい。ネットで検索して、英単語のスペルのままで表記されているサイトが多い中、カタカナ表記もほどほどある場合に、訳者としてはどちらを選択すべきなのか。たまたまその書類の当事者である会社がサイトを持っている場合はその表記に従えばいいのだけれど、今回は残念ながらその手が使えない。単純に英語を日本語に、日本語を英語にすればいいだけじゃないところが翻訳の難しさでもあり、面白さでもある。
とかなんとか考えながら何ページか終わったところで今日はもうタイムリミット。急いで着替えて銀座に向かう。油絵の先生が日本画廊協会展に出品していて、画廊茶房のオーナーである I さんが主催者側の一員として今日の受付当番なので、せっかくだから I さんのいる日に行くことにしたんである。初めて行く画廊だけれど、さすがに銀座のメインストリートにあるから方向音痴の私でも迷いようがない。幸いなことに I さんだけじゃなく先生もいらしていて、1月の教室がお休みだったので今年になってからお会いするのは初めて。先生の絵は個性的だからひとめですぐに分かる。最近の先生の絵は黒の太い輪郭線が特徴的だったのだけれど、今回はその輪郭線が鮮やかなブルーに変わり、とても新鮮。着物姿の女性を横から見たところで、前帯の下の線とお太鼓の下の線とがピッタリ合っているのが着付けのポイントをカバーしていてすごいと私が言ったら、先生がとても驚いた顔をして 「そうなんですか?」 って。最初はお太鼓の位置が低かったのをなんとなくバランスが悪いような気がして高くしただけで、前帯との位置関係はまったく考えていなかったし、下の線が合ってるなんて気づかずにいたし、着付けのこともまったく知らないと仰るので、今度はこっちがビックリ。無意識のうちに働く感覚の鋭さ。持って生まれた才能ってすごい。
バラエティ豊かな作品をじっくり楽しんでいる間に I さんの受付当番も終了し、先生と3人で夕食をとることになり、I さんの選択で久々に竹葉亭に向かう。この店の入り口はガラスの引き戸で中が見える。その引き戸の向こうに座っていらしたのがななななななな〜んと左團次さん! もう心臓が止まるかと思った。I さん、先生に続いて店内に入り、「こ、こんにちは!」 と震える声でご挨拶。左團次さんは、大きな目をさらに大きく開いて、いつものように知ってるけど知らないふりのなんともいえない表情。ドキドキしながら席に着くと、どうやらテイクアウトの出来上がりを待っていらしたらしい左團次さんは、そのあと2〜3分もしないうちにお帰りになってしまった。本当にすごいタイミング。I さんが竹葉亭を選んでくれなかったら、そして私たちが到着するのがもう少し遅かったら、絶対にお会いできなかったと思うと、もう胸がいっぱい。あぁ、もっとお話しすればよかった。17日のセミナー楽しみにしていますとか、今、左團次さんの絵を描かせて頂いているんですとか、いくらでも話すことはあったはずなのに〜、と頭の中が左團次さんでいっぱい。会話も上の空で、先生は呆れていらしたみたい。美味しい利休弁当でおなかを満たし、最高の偶然に心もウキウキ、足取りも軽くなる。
帰りにマルイに寄って新しい財布を買う。暮れに財布を失くして以来、未使用だった頂き物やエッセの定期購読でついてきたのを使っていたのだけれど、どうも使い勝手がイマイチだった。あちこちの売り場を回った末にたどり着いたのは、失くした財布を買った店。同じデザインのシリーズがまだ置いてある。失くしたのと同じのって縁起悪いかなぁ。でも1万円以上するブランド物より3千円程度のこの財布の方が使いやすそうなんだよなぁ。色も柄も気に入ってるし。さんざん迷って、結局は失くしたのと色も柄も同じのにしてしまった。一度失くした物はもう二度と失くさないだろう。… というか、失くすもんか!
シアワセ気分のままでプロントで編み物をしていたら、「甘いもの好き?」 と社員さん。ん? なんで? 「今日は余っちゃったから。内緒ね」 と、テーブルにそっと置いてくれたのはチョコレートムースケーキ。夕食に豪華なお弁当を食べちゃったから完全にカロリーオーバーだったけど、これがまた、ふんわりしっとりしていてとっても美味しかった。こんなの売ってたのね。知らなかったわ〜。シアワセ度さらにぐ〜んとアップ。社員さん、ありがとう〜。
それにしても、私服の左團次さん、めっちゃダンディだったわ〜♪ テイクアウトしたお弁当はご自分用かしらん、それともお遣い物かしらん。「お前には関係ないだろう!」 って言われちゃいそうだけど、気になるわ〜。