まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

せめて写真だけはサワヤカに…

そろそろ10時。さて出かけるか、と立ち上がったところへ電話が鳴った。急ぎの仕事だって。手一杯なんだけどなぁ。ただでさえ強引な先生に 「たった2枚だから」 とねじ込まれ、断れなかった。まぁ、仕方ないか、と気を取り直したところへまた電話。別の依頼でまたまた急ぎだという。さすがにこれ以上は受けられないので、とっても残念だったけどお断りする。

あいにくの雨で、ニットの上にジャケットを着込んでもなお肌寒いぐらい。方向音痴の私としては初めての場所への訪問はとてもとても不安なので、迷っても余裕があるように早めに出たら、思いがけず駅探の地図が分かりやすくて20分も前に着いてしまった。せっかく目の前が公園なのにベンチもびしょぬれ。完全な住宅街で他に時間をつぶせる場所もなく、幸いめずらしい花がアチコチに咲いていたのでケータイ片手にさまよい歩く。ようやく10分前。そろそろいいかなぁ、と司法書士事務所のドアを叩く。

いきなり前髪にカーラーを巻いたままの女性が出てきてビックリした〜。でももっと驚いたのは彼女の方だったみたい。事務所といってもごく普通のお宅のリビング。現れた先生は電話の印象そのままに誠実な方みたい。私より年下かな。髪はだいぶ寂しくなってるけど。

複雑な親族関係と依頼する登記手続の概要を伝える。持参した書類を先生が慎重に吟味し始める。そうしたら、伯母の家の縁側を隣の部屋まで通じる屋根つきの廊下に改築した際、増築の登記をしなかったらしく、伯母の家の一部が未登記のままになっていた。しかも、必要な書類はすべてそろえたはずだったのに、建物の権利証がぬけていた。土地の方はあったから安心してしまったらしい。家にあるはずだから書留で送る、と約束して帰ってきたのに … なかった。所有権移転仮登記の抹消だの養子縁組解消に伴う名義変更登記だの住居表示の変更に伴う名義変更登記だの書類が多すぎて、しかも昔の書類だから読みにくい草書体で、もう何がなんだか。肝心の権利証は伯母の家にあるのかなぁ。それともそもそもないのかなぁ。とにかく早急に確認に行くしかない。はぁ〜。

所有権移転の登記なんて1か月かそこらで終わるものとタカをくくっていたら、「年内にはなんとか」 と言われてしまった。そんなにかかるのか〜。ガックリ。

近所ではできない買物があったのでマルイに寄って、少しでも仕事を片付けようと急いで帰る。仕事の書類を確認。う、うそ〜っ! 確かに 「たった2枚」 ではあるけれど、200%に拡大しないと読めないぐらいにこまかい。やられた〜。できることなら送り返したい。く〜っ。1〜2時間で終わると思ったから引き受けたのに、たっぷり6時間もかかってしまった。

私にとっては大事件と言っていい電話が鳴ったのは、その仕事に追われている間のことだった。電話の主は、短い沈黙の後、こう言った。「オ、オレ。アニキ」 と。母の告別式を最後に、ほぼ20年も音信普通だった男からの電話。

確かに納骨の日時を知らせるハガキを送った。でも自分の連絡先は一切書かなかった。だから電話がかかってくるなんて予想もしていなかった。私の電話番号は伯母にきいていたと言う。拍子抜け。

伯母にさんざん迷惑をかけた男。私自身も殺意さえ抱いたことがある男。20年の時を経ても絶対に許すことのできない男。今さら何を言ってもどうにもならないと分かっていても、ごく最近の出来事については追及せざるを得なかった。案の定、納得のいく説明は帰ってこない。「私だって20年ぶりの会話でこんなこと言いたくないんだからね」 と思わず言うと、「言われても仕方ないと思ってる」 とヤツは言った。だがとうとう謝罪の言葉は口にしなかった。そう、ヤツはかつて一度だって謝罪したことがない。そういうヤツなんだ。結局ちっとも変わっていないんじゃないか。

納骨に来る気でいるらしい。自分から知らせたとはいえ、絶対来るはずがないと思っていたから複雑。

知りたくもなかったヤツのケータイの番号をメモし、電話を切った後も頭の中がゴチャゴチャで、言いようのない感情に支配されてしまってどうにもならない。落ち着いて座っていることもできない。たまらず I さんにメールする。心配してすぐに電話をくれた。しばし言いたいことを言わせてもらってようやく仕事に戻ることができた。ふぅ〜。

血は水よりも濃いだなんて絶対にウソだ! と強く思う。納骨の日は20年ぶりの対面になるかと思うと、憂鬱というより、ゾッとしてしまう。

今夜は眠れないだろうなぁ…。