まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

七月大歌舞伎

朝から歌舞伎座へ。今月は昼も夜も通し狂言

まず昼の部は、團十郎が出ずっぱりで13役を入れ代わり立ち代わり演じる「星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)」。「義経千本桜」をぎゅっと凝縮し、その主な役をすべて團十郎が演じるというもので、早替りに次ぐ早替り。隣りの女性がその都度、驚いてやたらと声を上げ、気持ちは分かるんだけど、毎回だとさすがに鬱陶しい。私としては、團十郎が演じる役と役とが対峙する場面をどう切り抜けるかの工夫のほうに興味があり、「木の実」の場面で小金吾の代わりに芝のぶくんが腰元で出ていたのがそのひとつ。最後の「四の切」の幕切れにとんでもない量の花びらが舞う … というよりは、ドサッと落ちてくる。いくらなんでも降らせすぎでしょう、と思ったら、2019年に当時まだ海老蔵だった團十郎が演じたときの日記にも同じ感想が書いてあった。

夜の部は「裏表太閤記」。こちらは猿翁がまだ三代目猿之助だった昭和56年に明治座で演じたきりで43年ぶりの再演なので、私もさすがに初見。明智光秀織田信長豊臣秀吉前田利家などおなじみの面々で虚実入り交じる展開。光秀討伐に向かう秀吉の船が嵐に見舞われると、海の神が現れて波を鎮めるだけでなく、船が空を飛んでしまったりする。大詰めの場面では久しぶりの本水。事前に配布されていたビニール袋で水を防ぎながら、幕が閉まった後、隣りの人と思わず「わざと飛ばしてましたよね」なんて話したりして、大盛り上がり。

ここで終わっても良かったのに、そのあと踊りがつく。これが西遊記に見立てたもので、秀吉が猿と呼ばれていたことから連想したらしい。最後はすべて秀吉の夢だったというオチ。

團十郎が狐と知盛で2回の宙乗り。さらに夜の部でも幸四郎孫悟空として宙乗りをしたあと、親分を追いかけて九團次の沙悟浄と青虎の猪八戒が揃って宙乗り。1日4回の宙乗りは多すぎて、さすがに食傷気味だった。たまにやるからいいのよ、あれは。

宙乗りをしながら見下ろす客席はさぞ壮観なんだろうなぁ、と思う。そしてその景色を猿之助はもう見ることがないのだろうか、という思いが胸をよぎる。幕間に久しぶりに三階へ行って「めでたい焼き」を食べ、亡くなった歌舞伎俳優の写真がずらりと並ぶコーナーで左團次さんと段四郎さんの写真が縦に並んでいるのを見て、なんとも言えない気持ちになってしまった。

ビニールにはさんであった紙に「水道水を使用しております」との注意書きがあって、前からこんなこと書いてあったかなぁ? と不思議に思った。

20時45分頃に終演。ほんの数分違いで終バスに間に合わなかった。昼の部と夜の部の間も木挽町広場のタリーズにいたし、ずっと冷房の中でヒエヒエだったのに、最寄り駅から自宅まで、もう22時すぎに十数分歩いただけで汗がにじみ、お風呂に直行。

ゆっくりお風呂につかりながら芝居の余韻にひたる。昼も夜も運動量が半端なくて、あれを毎日やっているわけだから、團十郎にしても幸四郎にしても、体力お化けだなぁ。