まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座

浅草公会堂、国立劇場に続き、歌舞伎座の「壽初春大歌舞伎」へ。11月・12月は團十郎新之助襲名披露で2部制だったのに、また3部制に逆戻り。

第1部の幕開きは、七之助の出雲阿国猿之助の名古屋山三を中心とした華やかな舞踊劇で、愛之助勘九郎の左源太・右源太のほか若手も大勢加わる中に、現役最高齢の寿猿さんが村長で登場。別の日には猿之助の名前が出てこなくて勘九郎に突っ込まれたりしていたそうだけれど、この日は台詞も踊りも問題なくこなし、拍手喝采。壮観な総踊りの場面も結構長くて、遠い昔の高校時代、女子校だったせいかダンスのクラスがあって、振付が覚えられずにひどく苦労した私にしてみれば、毎月演目が変わるのに新しい役の動きや台詞に新しい踊りの振付と、当たり前のように演じていること自体がもう神業としか思えない。

踊りの後は「弁天娘女男白浪」。愛之助の弁天は初めて(永楽座と南座では演じたことがあるらしい)。前の幕に続いて相方は勘九郎の南郷で、江戸風の南郷と関西風の弁天という組み合わせが新鮮。やっぱりどこか台詞回しが違うのよね。良し悪しじゃなく、単に個性と言うべきか。日本駄右衛門は芝翫で、稲瀬川の場面になると猿之助の忠信利平と七之助の赤星が加わる。この全体的に若い顔ぶれに、世代交代の波を感じざるを得ない。ひとつだけ違和感があったのは、すっかり持ち役となりつつある松之助の番頭に続く奉公人たちが口を揃えて言う台詞がやたらと強くて一本調子。いつもはそうじゃないのになぁ。

第1部と第2部の間は1時間ちょっとしかなく、約40分前には開場するので忙しい。地下の木挽町広場でまず舞台写真。第1部の写真は男寅さんだけで、あとの2枚はそれぞれ第2部と第3部から、猿之助幸四郎七之助幸四郎の2組。おみやげ処かおみせも除き、今月の演目にちなんだ「ねこづくし」のハガキを2枚。そのあと木挽町広場に戻り、マスクチャームのコーナーでパンダを2種類。別にマスクチャームとして使う必要はないわけで、アクセサリーにしても良さそうだったから。

第2部初めの「寿恵方曾我」は、曾我物にしては珍しく観たことがない…と思ったら、「歌舞伎公演データベース」でヒットしないから新作らしい。第1部の舞踊とはまた趣向が違う舞踊劇で、先月途中で休演した白鸚が工藤の役で復帰し、幸四郎染五郎と3代そろっての共演。

続く「人間万事金世中」は「強欲勢左衛門始末」という副題が付き、その勢左衛門を彌十郎。せっかくの主演なのに、物語そのものがイマイチなのよね。明治時代を背景に洋装・短髪の人物が多く登場する散切物で、ドタバタコメディのようでもあり、それでいてオチがない、みたいな…。それでも、というかだからこそというか、彌十郎さんの奮闘を応援したくなる。

今月の白眉はなんといっても第三部の「十六夜清心」。七之助十六夜幸四郎の清心が前半と後半とでまったくの別人に変わってしまうところがミソで、七之助は前半の哀れを誘う姿もさることながら、後半の悪婆と呼ばれる役どころがたまらなく魅力的。幸四郎も、僧から小悪党に成り下がり、それでいて芯から悪党にはなりきれず、十六夜に尻を叩かれているのが面白い。また、もうひとりの主要人物である白蓮を演じる梅玉さんがもうこの人しかいないと思わせるさすがの演技で、堪能した。

20時半すぎに終演し、約1時間後に帰宅。今日はもう何もする気がしなーい。