まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

七月大歌舞伎

緊急事態宣言が出ているため歌舞伎座の第三部がどうなるか心配していたのだけれど、第三部だけは他より早く明日が千秋楽で、12日の発令から6日間だけのせいか、予定通りの上演と決まってひと安心。

まず第一部の1つ目は「あんまと泥棒」で、中車のあんま秀の一に松緑の泥棒権太郎。出演者はこの二人だけ。同じ配役で観たのがつい最近のような気がするのに、調べてみたら2018年の12月。そんなに経ったかしらねぇ。まだ新米の泥棒で、実は優しく真っ正直で、口のうまい秀の一にすっかり騙され、盗むどころかなけなしの金を恵んでしまう権太郎。こういう役に松緑ってはまるのよねぇ。中車はたしかに巧いんだけど、どうもあの濁声が苦手で…。

2つ目の「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」も昨年11月に同じく猿之助で上演されたばかりで、こちらにはチラシにも「再びのご熱望にお応えして」と書かれている。6役を早替りで演じ分ける猿之助が最後に蜘蛛の精となって大立ち廻りを披露したあと、大詰に松緑が荒事の扮装で出て、先々月は自分が蜘蛛で澤瀉屋のほうが退治する役だったのに、と「土蜘」に絡めて言うのが大受けしていた。

半袖のTシャツの上に長袖の綿シャツを羽織っていても肌寒く、持参したスカーフとアームカバーが大活躍。でも第一部が終わって外へ出たら、日差しが強くてまさに夏真っ盛り。

ランチはスターバックスリザーブで。近所のスタバは照明が暗くて読み書きしにくいからすっかり足が遠のいてしまっているのだけれど、他の場所ではたまに寄るのでポイントがたまり、700円分のeチケットへの交換期限が近づいていた。でも合計じゃなく単価で700円となると、ほぼドリップ専門の私には普通のスタバでは使い切れないので、リザーブだけのランチメニューで使うことにしたという次第。2種類のデリを選べるプレートで、野菜も取れるし、ラザニアは熱々。普通のスタバにも置いてほしい!

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今月は第二部をパスすることにしたので、第三部の開場まで4時間近く。スタバでも食後には「芙蓉の干城」の続きを読んでいたものの、スカーフとアームカバーの両方を使っても足りないぐらい冷房が強く、ちょうど混んできたし、と退散。教文館藤城清治の展示会を開催中なのを思い出し、行ってみることにした。緊急事態宣言が出ていることを忘れるぐらい、かなりの人手。こう何度も繰り返されるとオオカミ少年みたいなものだから、仕方ないよねぇ。

藤城清治さんご本人の希望で写真撮影OK(ただし動画はNG)というありがたい展示。「こわれ橋」という動画作品で、ワニに食べられてしまったカメとカニはその後、ワニの口から風船に乗って飛び出してきて助かるのに、溺れたオオカミはそのまま。オオカミって悪者にされがちでかわいそう。

もうひとつの動画作品は長編の「泣いた赤鬼」。浜田広介童話集は書店を営んでいた伯母にもらって大切にしていた宝物だったのに、引っ越しのときに捨てられてしまったのよねぇ。泣いて抗議したけど後の祭りだった。そんなことを思い出しながら、優しい世界にひたる。赤鬼の住まいも、青鬼が赤鬼のためにわざと暴れる老夫婦の住まいも、それから村人たちの服装も、ディテールまでカラフルに描かれていて、とっても楽しい。そして最後の青鬼の手紙では、文字がところどころぼやけて赤鬼の涙を思わせる。語り手が藤城清治さんご本人なのも素敵。

階下の「ナルニア国」に OTTAVA のリスナーさんがいらっしゃるのを思い出し、寄ってみると、幸い売場にいらして、少しだけお話することができた。マスクで顔半分が見えない状態だから、もし違う人だったらどうしようってドキドキしちゃった。

歌舞伎座に戻って第三部。海老蔵が裃姿での挨拶に続き、5役を演じる「雷神不動北山桜」。普段は単独で上演される「毛抜」と「鳴神」を組み入れた作品で、単独の「毛抜」には名前しか出てこない小磯を芝のぶくん。村人を演じる右若さんに和裁を習って浴衣を縫っているところ、とブログで読んで知っているので、お二人がからむ場面はなかったものの、楽屋での様子を想像すると楽しい。同じく「毛抜」の民部に男女蔵さん、錦の前を男寅くん、と左團次さんのご子息とお孫さんが一緒に活躍しているのも嬉しい。海老蔵は2年ぶりの歌舞伎座だそうな。もちろん他の劇場には出ていたし、演舞場のは観たけれど、本来ならこの歌舞伎座でとっくに團十郎を襲名していたはずだと思うとねぇ…。5役のうちでは、「毛抜」の弾正の明るさ、大らかさと、早雲王子の悪の魅力が特に際立っていた。あと「鳴神」の児太郎の雲絶間姫! きっぱりした台詞の強さがとても良かった。お父さんの若い頃にますます似てきたなぁ。

大満足で帰途につく。来月も無事にすべて予定どおり上演されますように…!