まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

歌舞伎座

今日は母の祥月命日で、丸35年も経ってしまった。そんな日に、仏壇に手を合わせはしたものの、お墓参りに行かずに歌舞伎座へ。

しっかり余裕を持って支度をしたはずだったのに、電車に乗る直前、スマホを忘れてきたことに気付く。もう取りに帰る余裕はない。

三部制の「壽初春大歌舞伎」。各部とも2演目ずつで、間に15分と短い休憩が入る(劇場内の食事はNG)。

今年は浅草歌舞伎が中止のため、第一部の最初は浅草歌舞伎に出演するはずだった若手が勤め、その意を込めた外題が「壽浅草柱建」。「対面」の趣向を軸に、新築家屋で初めて柱を建てる際の祝いの儀式を取り入れ、最後は大きな宝船。新春にふさわしい華やかな一幕。

続いて猿翁十種の内「悪太郎」。酒乱のために悪太郎と呼ばれる甥を諌めようとする伯父を猿弥、悪太郎猿之助。酔って寝ている間に頭は坊主に、自慢の鎌髭も剃られてしまう。鷹之資の太郎冠者に福之助の智蓮坊が加わり、鳴り響くおりんの音が耳に心地よい。

完全入れ替え制なので外に出てランチ。いきなりステーキへ。最近はグリルチキンばかりだったんだけど、夜までの長丁場なので久々にワイルドステーキにしてみた。スマホがなくて時間が分からず、残りの時間は歌舞伎座地下の木挽町広場で過ごす。ここなら開場時間を太鼓の音で知らせてくれるから。

第二部は、昨年亡くなった坂田藤十郎を偲ぶ「夕霧名残の正月」を二人の息子が演じる。鴈治郎の伊左衛門に藤十郎の面影が重なる。病で亡くなったはずの夕霧が現れる場面で、扇雀の夕霧の背景に墨染の桜。美しかった。

続く「仮名手本忠臣蔵」七段目では、吉右衛門が休演で由良之助は梅玉が代役とばかり思っていたのに吉右衛門が登場。嬉しい驚き。ただまだ本調子でないのは明らかで、声に力がなく、大酔している役だからところどころふらつくのが演技だと分かっていても心配になる。それでも、というかだからこそと言うべきか、台詞ににじむお軽への情愛、そして九太夫を打ち据える場面での鬼気迫る表情。素晴らしい由良之助だった。また雀右衛門のお軽に梅玉の平右衛門は、個人的に各々の役で当代ではベストのお二人だから、もう何度も観ているのに心にしみて、なにかとんでもなく貴重なものを観せて頂いたような気がした。

それなのに、これほど充実していた第二部がガラガラだったのはどういうわけ??? たまたま今日だけ空いていたのか、平日はいつもガラガラなのか分からないけど、あまりにもったいなさすぎる。

再び外へ出て、地下のタリーズへ。店内に時計がなくて、「翻訳目録」を読んでいるうちに居眠りしてしまい、ふと目が覚めて不安になり、店員さんに時間をきいたら17時半。開場の10分前だった。あぶないあぶない。

第三部の初めは、高麗屋三代の「車引」で、白鸚の松王丸、幸四郎の梅王丸、染五郎の桜丸。染ちゃん、素晴らしくイケメンなんだけど、台詞も動きもぎこちない。まだ15歳だからねぇ。将来に期待。廣太郎の杉王丸に彌十郎の時平公。

そして最後が「らくだ」で、お騒がせの芝翫の半次に愛之助の久六、左團次さんが大家で、そのおかみさんを彌十郎、半次の妹を左團次さんの孫の男寅くん、ふぐの毒で死んだ駱駝の馬太郎を松江。死人をかついで踊らせるというとんでもない話で、大いに笑った。おかみさんに無理やり死人をおんぶさせる場面で、愛之助彌十郎が折り重なったその上に、松江の大きな身体がどーんと。予定より勢いが付きすぎたようで、のけぞって痛がる彌十郎。そのあとしばらく芝翫愛之助も笑ってしまい、アドリブ全開。生の舞台ならではのハプニング。

この第三部も第二部ほどではないものの空席が目立ち、本来は終演後の混雑を避けるため、数列ごとに席を立つのに、最初から全列退出OKだった。たまたま今日だけだといいんだけど。

20時すぎの終演予定だったのを第三部の開始を20分繰り上げ、20時ちょっと前に終演。21時数分前に帰宅し、忘れていったスマホをチェックしたら、よりによってこんな日に、もう何か月も連絡がなかった古巣のオフィスから仕事の依頼がきていた。留守の間に2回、そして私がチェックする直前に第3信。急いで返信し、丁重にお詫びをしてから、ファイルを送ってもらって見積もりの返信。まだクライアント側で未確定だそうで、受注できるかどうかは連絡待ち。

一方、WOWOWから返信があり、レコーダーと一体型のテレビに買い換えた結果、これまで2契約だったのが1契約で済むことになった。早速、レコーダーのほうの契約を解除。思わぬところで節約できちゃった。

スマホがなくて写真が撮れなかったので、購入した舞台写真をば。

f:id:maru99:20210125231638j:plain