まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

博士と狂人

今月15日に献血の予約を入れていたところ、16日からヒューマントラストシネマ有楽町で「博士と狂人」の上映がスタートすることが分かり、献血は毎回、有楽町の献血ルームでしているので、せっかく有楽町まで行くなら映画と同じ日に、と献血の予約を19日に変更。献血前は満腹でも空腹でも良くないそうなので、上映スケジュールとにらめっこして、先に映画を観ることにした。

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「相棒」の「辞書の神様」再放送をきっかけとして、日本語の辞書の編纂に関する本を何冊か続けて読んでいた矢先、オックスフォード英語大辞典の編纂に関わるこの映画のことを知り、ぜひ観たいと思っていた。

史実をもとにしていて、原作となったノンフィクションが刊行されたのは1998年。「博士と狂人」のうち「博士」のほうを演じるメル・ギブソンが自ら映画化に名乗りを上げ、構想に20年近くもかけた作品。「狂人」とされているのは、戦場での過酷な体験から精神を病み、命を狙われているという妄想から誤って無関係の男性を殺してしまい、刑事犯精神病院に拘禁されている元軍医で、ショーン・ペンが演じている。

映画の前半は2人の物語が別々に描かれ、どこで接点が生まれるのだろうと興味が湧いた。辞書をイチから作る工程は気が遠くなるほど膨大な作業を要する。ひとつの英単語でもその意味は多義に渡り、時代とともに変遷する。その意味と変遷をすべて網羅しようとする遠大なプロジェクトで、過去の文学その他の資料をもとに、例えば15世紀、16世紀、18世紀の用例が見つかっても、17世紀の用例がなければ探し続ける。そんな緻密な作業をすべての英単語について行うというのだから、一体どれだけの時間と労力が必要になるのか。この作業に「一般」の力を借りようと、用例を広く一般から募集することになり、これに「狂人」が応じたことから2人の交流が始まる。

博士の部屋を埋めていく膨大な「用例」のメモ。「相棒」の「辞書の神様」のモデルになったケンボー先生も、145万もの用例を集め、そのメモが今も保管されているという。日英の違いはあれ、辞書の編纂という作業そのものはまったく同じなんだなぁ。

映画としての評価は賛否両論あるようだけれど、辞書そのものへの興味もあり、私はとても面白かった。原作の日本語版が図書館にあったので予約済み。映画がどこまで原作に忠実なのかも興味があるので、楽しみ。