まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

蝶々夫人

OTTAVA.TVで配信されるウィーン国立歌劇場の公演だけでなく、BS NHK のプレミアムシアターでもいろんなオペラが放送されているし、メトロポリタン・オペラのライブビューイングもシーズン真っ只中で、忙しいことこの上ない。

今日はそのうち、東劇でメトロポリタン・オペラのライブビューイング。今シーズン3作目の「蝶々夫人」。

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正直あまり好きなオペラではなくて、どうも後味が良くない印象が強いんだけど、今回は、タイトルロールを演じるのが中国生まれのホイ・ヘーで、ストレートでロングの黒髪という点で、今までに観た舞台の中では一番、違和感がなかった。最初に観たときには強烈な違和感があった文楽人形仕立ての息子も、単に見慣れたというだけでなく、今回は扱いが違い、心情表現がより細やかだったように思う。衣装も、今までは、シンプルであればあるほど美しいはずの着物を不必要に華美に飾り立てて悪趣味になっていたのが、今回はギリギリのところで踏ん張ったという感じ。装置も、折り紙の鳥や提灯、ろうそくなどを効果的に使い、場面転換も何枚もの襖をうまく使って、幻想的な場面が展開されていた。全体的な演出は前回と同じなんだけど、そういうディテールが今回はとても良かった。

ピンカートンを演じたブルース・スレッジは、2日前に急に代役に決まり初役だったそうで、幕間は準備に忙しいのでインタビューもカット。堂々とした歌いっぷりで、代役と言われなければ分からないぐらい。シャープレスも代役でパウロ・ジョット。前にも絶対、観たことがあると思ったら、床屋が誤って客の鼻を切り落としてしまい、当の床屋も客も気づかず、その鼻が勝手に動き回るという荒唐無稽なオペラ「鼻」の主役だった。蝶々さんに仕えるスズキを演じたエリザベス・ドゥショングも良かったなぁ。3年もほったらかしにしておいて妻を伴い再来日したピンカートン一行に対し、敵意をむき出しにした強い視線。蝶々さんを守ろうとする気持ちが伝わってきた。

歌舞伎では、女性が自害する場合は大抵、俯いて左胸の下辺りに懐剣を突き立てるのだけれど、蝶々さんは膝立ちで上を向き、高々と掲げた剣を頸動脈の辺りにぐさり。たしかにそのほうが舞台映えするけども…。

カーテンコールにも坊やの人形が登場し、蝶々さんがひしと抱きしめる場面がとても良かった。

そんなわけで、プッチーニの名作「蝶々夫人」への苦手意識が少し消えたような気がする。