まるぶろぐ

備忘録として日々の出来事をこまごまと綴っております

新版オグリ

前に近藤ようこさんの漫画で原作のおさらいをしたばかり。開演前の舞台には、一面の鏡の前に華やかな衣装がディスプレーされていた。鏡に客席が映り、とてもキレイ。

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説教節のオリジナルをそのまま再現した漫画とは別世界のスーパー歌舞伎ド派手でエネルギッシュでスペクタクルで、とてつもなくパワフル。それでいてドラマの核心はしっかりと丁寧に描かれていて、ただのショーで終わっていない。先代の想いを受け継ぎながら、さらに進化しているのを実感。

最近のスーパー歌舞伎では、左團次さんのご子息の男女蔵さんが毎回とてもいい役で出演していて、今回はそのご子息、つまり左團次さんのお孫さんの男寅くんも小栗六人衆のひとりで出演しているのが嬉しい限り。六人衆のひとりで鋭い目つきが印象的な六郎が誰だか分からなくて、写真の売り場で確認したら玉太郎。いつのまにこんなに大きくなっちゃったのー、とビックリ。歌舞伎界以外からの出演も多く、把握できていないので筋書の見本を見せてもらったら、いつもどおりのプロフィール写真ではなく、全員白シャツで、メインキャストはそれぞれ赤いバラを持ってポーズを取っていて、それぞれにゆかりのある人がコメントを寄せているのも興味深く、筋書はもう長いことずっと買っていなかったのに久々に購入。

全体を通して特に印象的だったのは、どんなに辛い思いをしても常に前向きで純粋で優しげな照手姫を新悟が爽やかに演じていたこと。まるで春風を身にまとっているかのようだった。いつも美味しい役どころの浅野和之さんが閻魔大王で、その夫人を演じる笑三郎一条ゆかりの名作「有閑倶楽部」の剣菱百合子さんみたいにカッコよかった。

高橋洋さんは、つい最近どこかで見たような…と思ったら、「これは経費で落ちません」の営業部だった人。嘉島典俊さんは「ワンピース」でも様々な役を演じていらした。他に石黒英雄さんや下村青さんなどがまったく違和感なく活躍していて、歌舞伎俳優かどうかなんてもう関係ないんじゃないかというぐらい。そんな中、翁を演じていたのが石橋正次さん。もともと新国劇にいらしたとは知らなかったなぁ。だって石橋正次といえば「飛び出せ青春」の高木だったり、言わずもがなの「夜明けの停車場」。どんな歌詞だっけ、と試しに歌ってみたらワンコーラス全部歌える自分に驚いたりもしたけども。その石橋さんが猿之助としみじみとした場面を演じているのがなんとも不思議に思えた。違和感がまったくないのが余計に不思議なの。

両花道から猿之助のオグリと隼人の遊行上人がそれぞれ馬に乗っての宙乗り。カーテンコールも大盛り上がりで、最後はスタンディングオベーション。これだけの舞台を毎日、猿之助と隼人が役を替えながらとはいえ1日2回もやっているんだから、役者って本当にタフだなぁ。