幕開きの「寿曾我対面」も若い布陣で、松緑の工藤に、実の兄弟である梅枝・萬太郎が十郎・五郎の兄弟を演じる。歌昇の朝比奈は、最初はこの手の役はニンにないように思ったけど、二度目でもう違和感がないのは偉い。最近すっかり筋書きを買わなくなってしまったので、舞台上にたくさんずらりと居並ぶ役者の中には誰だか分からない人もいたりするんだけど、大向うが屋号を叫んでくれるので、ああ、あの子か、と分かる。
次が勧進帳。海老蔵の弁慶に松緑の富樫、菊之助の義経と、かつて三之助と呼ばれた三人が揃う。同世代だからバランスがいい。海老蔵は、目ヂカラだけじゃなく、毎日しっかりトレーニングしてるだけあって体幹が鍛えられていて、重たい衣装で片足を上げた状態でもびくとも揺るがないのがすごい。この三人で今後もいろんな舞台を見せてほしいなぁ。
続いて「神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)」通称「め組の喧嘩」。実際に起きため組の鳶たちと力士の乱闘事件を題材にしていて、たとえば「暴れん坊将軍」でも「め組の辰五郎」が出てくるように、いろは48組あった町火消しの中で「め組」がひときわ有名なのは、その事件が歌舞伎その他で取り上げられたせいらしい。
菊五郎が演じる辰五郎の仕草のひとつひとつが粋で、この雰囲気を出せる人が他にいないんだよねぇ。対する力士のトップにいるのが左團次さんの四ツ車。この幕を観るたび、團十郎を思い出す。喧嘩の最中、自分が四ツ車なのに「四ツ車!」と大音量で呼びかけてしまい、「四ツ車はてめぇじゃねぇか」とツッコミを入れながら菊五郎も隣りにいた三津五郎も笑いをこらえきれなくて後ろを向いてしまい、その肩がヒクヒク動いているのに、当の團十郎は何もなかったかのように平然としていて、おかしかったんだよねぇ。懐かしい。
いつもながらのチームワークのいい立ち廻り。あ、そうそう、辰五郎の倅又八を演じる亀三郎くんも大活躍。可愛かったー。
そんなこんなで盛り沢山。今月も楽しかった (^^)