メトロポリタン・オペラのライブビューイング、今シーズン5作目はヴェルディの「椿姫」。屈指の名作&人気作とあって、初日から大盛況。
このライブビューイングのシリーズだけでも「椿姫」は3作目。でもこれまでの2回はいずれもW・デッカーの演出で、モダンでシンプルな装置に、ヴィオレッタに残された時間を暗示するかのような大きな時計が印象的で、ヴィオレッタを囲む人々も記号のように黒の衣装で統一され、ヴィオレッタの真紅の衣装を際立たせつつ、全体としては抽象的に構築されていた。それが今回のマイケル・メイヤーによる演出は、18世紀の社交界を舞台に、調度品を含む装置も衣装も華やかできらびやか。ヴィオレッタを演じたディアナ・ダムラウがインタビューで、ゼフィレッリの映画「椿姫」で初めてオペラに出会い、魅せられて今の自分があり、(デッカー演出も素敵だったけど)本作こそが私の夢見ていた「椿姫」の世界だと語っていて、私もこの豪華さこそ「椿姫」の世界だと思う! 思わず頷いていた。
ホスト役のラチヴェリシュヴィリがダムラウのことを「オペラ界のメリル・ストリープ」と評していて、なるほどなぁ、とこれも同意。「リゴレット」での娘役に続き、「真珠採り」ではオリエンタルな雰囲気を醸し出し、「ロメオとジュリエット」では神秘性さえ感じさせる瑞々しいジュリエットだった。本作の中でも、パーティーの主役として輝いていたときと死の床で苦しむ彼女とは別人のようで、それだけ見事な演技をしつつ、歌唱はもちろん第一級。すごかったー。
ファン・ディエゴ・フローレスのアルフレードも素晴らしかったし、クイン・ケルシーの父親も(自身は父親としての経験がないそうだけれど)息子への愛に満ちた包容力を感じさせ、総合的に、メトロポリタン・オペラだけでなく、テレビで観た他のプロダクションも含め、これまでに観た「椿姫」の中で間違いなくダントツで最高だった。
唯一、バレエシーンはヴィオレッタにつきまとう「死の影」を表したそうで、ダンサーが皆ゾンビのようなメイクをしていて、それはちょっとやりすぎなんじゃないかと思った。せっかくの素敵なダンスなのに、どこかコミカルな印象になってしまっていたので。
やっぱりオペラって素晴らしいわー!!!